ラジオを聞きながら空爆された場所を特定し、現場に車を走らせた。空爆を避けるために猛スピードだ。イスラエル軍は警告弾を落とし、その後空爆するという手法を取っていたが、警告弾がない場合もあるため、一瞬たりとも気が抜けない。
空爆が起きたばかりだというガザ市ゼイトゥン地区の民家の「跡」では、湯気のように砂埃が舞い上がっていた。駆け付けた近隣住民ががれきの下敷きになった住人を救助するため、素手でコンクリートの破片を押しのけた。武装勢力の戦闘員の自宅だという。まもなく戦闘員の妻や子供とみられる遺体が掘り出された。
傍らでは、戦闘員の親類の男性2人が折り重なるように嘆き崩れていた。人目もはばからず、大声で泣いている。戦闘員の家族だから死ぬのは「仕方ない」のだろうか。イスラエル兵の家族も同じような目にあったらどうなるのだろうか。釈然としない思いを抱えながら現場を後にした。
ガザに入ったのは、イスラム教のラマダン(断食月)の最中だった。イスラム教徒である助手は日没後まで食事も水も取らないため、一緒にいるこちらも気付いたら水を一滴も飲んでいなかった。ガザはエルサレムよりもはるかに蒸し暑く、汗が顔からしたたり落ちる。
取材を終えた帰路、水を買うために道路沿いの商店に寄ると、店内に数人の客がいた。店主のアイマン・ハシェムさん(33)いわく、イスラエルによる軍事作戦が始まる前は1日50~60人来店していたが、10~15人に激減。買う物も日持ちする食品が多いという。
「給与が入らないからツケで買う人が9割だよ」。ハシェムさんはレジのカウンターで、購入者の名前と金額が記されたノートを見せてくれた。計5000ドルほど肩代わりしていることになる。店を開けるほど赤字になるが、「有事だから仕方ない」と肩をすくめた。
イスラエル側の説明だと、ハマスのロケット弾攻撃がイスラエル軍のガザ空爆の理由だ。また、財政難のハマスは公務員への給与支払いが半年以上滞っている。そんなハマスを嫌いにならないのか聞くと、「ハマスしかわれわれを守ってくれないから、みんな支持するんだ」と語った。
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