アベノミクスの核心=「レジームチェンジ」で始まった日本経済復活シナリオ
 「外交」~Diplomacy~

内閣官房参与 静岡県立大学教授本田 悦朗

内閣官房参与 静岡県立大学教授 本田悦朗(ほんだ・えつろう) 東京大学法学部卒。1978年に大蔵省(現財務省)入省。在米国公使、欧州復興開発銀行(EBRD)日本代表理事、財務省大臣官房政策評価審議官などを歴任。2012年4月から静岡県立大学教授。第2 次安倍政権発足後、内閣官房参与。専門は金融論・国際金融論。【時事通信社】

 インフレ2%が前提条件

 ─まず「アベノミクス」の核心について伺います。大胆な金融政策、財政出動、成長戦略─安倍首相がこの「三本の矢」でいくと決意したのはいつ頃でしょうか。

 本田:正確には私も知りませんが、安倍首相が「三本の矢」のうちの第一の矢、「大胆な金融政策」、これをデフレを脱却するためにやり抜こうと決意されたのは、多分私がロンドンに行っている間(2008年~11年)ではないかと思います。というのも、11年7月、私がロンドンから帰国した直後にお会いした際、安倍首相は「何とかしてデフレを脱却しないと、日本経済は大変なことになる」とおっしゃっていましたから。その後、何度かお会いした際、デフレを脱却するための大胆な金融政策は、分かりやすく説明するのは容易ではないが、どうやって国民に訴えていったらいいかを議論したことがあります。

 その時に申し上げたのは、「レジームチェンジ」、つまり金融政策の枠組みを変えることによって、緩やかなインフレ予想を国民に持ってもらうことが重要だということです。デフレに順応するのではなくて、デフレと闘う積極的な金融政策、積極的な日銀を演出する。そのためには、それまで日銀がやっていたような小出しの金融緩和ではだめです。2%のインフレ率を達成するまでは「無制限」に国債、特に長期国債を買っていくとアピールすべきだと申し上げました。「レジームチェンジ」「無制限国債購入」でいきましょうと。そういった、なるべく短くて分かりやすいキーワードが効果的だと申し上げました。もちろん発想の源泉は安倍首相ご本人がお持ちでしたが、「あ、それを言うと分かりやすいね」とおっしゃって、昨年暮れの総選挙の頃にはトップ・プライオリティーの一つになっていました。

 マーケットも好意的に反応して、まだ何もしないうちから「アベノミクス期待」で、円高が是正され、株価が持ち上がってきて、非常にいいスタートを切った。今のところは期待先行ですけれども、この期待が将来、まさに「緩やかなインフレの実現」につながっていくことを、安倍首相もよく理解しておられると思います。  マーケットの反応や国民の支持の背景には、日本経済は長年のデフレによって瀬戸際まで追い込まれているという危機感があったと思います。デフレは、ありとあらゆるところにひずみをもたらしています。その中でも一番大きなひずみは、名目GDPが増えないことです。

 実質GDPでわれわれの生活の豊さが測れるにしても、デフレの下では名目GDPが減ってしまいます。われわれの気持ちとしては、やはり名目GDPが増えないと、明るい展望が開けない。まず、デフレの下では企業の売上げや収益が減るので、給料が下がります。給料が下がると消費者の購買力が低下し、消費者物価も下がりますので、これが企業の収益減をもたらすという悪循環に陥ってしまいます。名目的な経済成長、これが人間を前向きな発想にするという意味では、われわれのマインドに与える影響は大きい。2%程度の緩やかなインフレは、経済成長の前提条件なのです。

 また財政再建のためにもデフレからの脱却は不可欠です。財政が破綻するかどうかという尺度の一つに、いわゆるドーマーの条件と言われるものがあります。これは、国債発行残高を名目GDPで割ったもので、これが増え続ければいつかは破綻します。今、税収減で国債の発行残高は増えてるし、デフレで名目GDPは減っている。で、国債発行残高を名目GDPで割ったものが増え続けている。だから、名目GDPを増やす。実際、名目GDPを増やせば、税収が増えますので、財政再建の一番手っとり早い、もちろん歳出の見直しも必要ですが、一番重要な税収増をもたらすということです。

バックナンバー

新着

オリジナル記事

(旬の話題を掘り下げました)
ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ