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「第3波」の今こそ再考 なぜ中国は感染拡大を抑制できているのか
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重要なのは感染者の確認

 一方、世界で最初に新型コロナ感染が確認された中国は、すでにその抑制に成功したと見られている。日本のみならず欧米諸国でも感染が拡大しているにもかかわらず、なぜ中国はそれを抑制できたのだろうか。

 理由はきわめて単純明快である。

 そもそもウイルス自身は動くことができない。それに感染した人が動くから、ウイルスの感染が拡大するのである。特効薬と完全なワクチンができていない現状において、新型コロナの感染を抑制するというのは、感染した人を探し出して厳格に隔離するしかない。

 具体的に誰が感染しているかを知るには、検温だけでは不十分であり、PCR検査を希望者全員に対して行う必要がある。否、希望しなくても、少しでも感染の疑いのある人であれば、PCR検査を受けさせなければならない。

 日本では、東京都の感染者が一番多く報告されている。毎日、東京で実施されているPCR検査は多くても1万件程度である。これで感染した人を探し出すには限界がある。日本の感染対策はマスクの着用、手の消毒に加え、電車やエレベーターのなかで大声で話さないというモラルの高さに委ねられている。

 確かに日本人は世界でも清潔好きな国民と言える。ニューヨーク、ロンドン、パリなど欧米の大都市でプラタナスなどの木の葉が道にたくさん落ちても、それを掃除する人はまずいない。日本では、家の周りに少しでも木の葉が落ちたら、そこの住民はすぐに箒と塵取りを持って掃除する。マスクの着用と手の消毒について、日本人は何の抵抗感もなく真面目に実施する。しかし、それでもコロナの感染は収まらない。

 では、なぜ中国はコロナの感染を抑えられたのだろうか。

 中国では、コロナの感染が発生してから、マスクの着用は義務化されている。ただし、手の消毒は徹底されていない。日本では、スーパーだろうが居酒屋だろうが、すべてのところに手の消毒液が置かれている。中国では、そこまで徹底されていない。

 その代わりに、ほぼすべての成人の行動がスマホの専用アプリで追跡されている。

 たとえば、誰かがPCR検査で陽性と確認されたら、少なくとも、1週間以内にこの人と接触した人を割り出すことができる。当局は濃厚接触者を探し出して、強制的にPCR検査を受けさせる。もし感染クラスターが発生した場合、その地域全体がすぐに封鎖される。

 日本からみれば、中国のやり方はやや神経質すぎるようにみえる。

 ならばなぜ中国は神経質にならなければならないのだろうか。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染拡大に見舞われて、2020年にまた新型コロナ感染に見舞われた中国は、ウイルス感染症の怖さを十分に知っているからである。

 それに対して、日本の場合は「3密」こそが感染が広がる原因と思われ、外食するときも少人数で時間を短くするように呼び掛けている。

 むろん、会食の人数が多ければ、それだけ感染するリスクは高まる。また、集まる時間が長ければ、その分感染機会も増える可能性が高くなる。しかし、少人数でも感染するときは感染する。

 重要なのは、集まる人のなかに感染者がいるかどうかを確認することである。レストランのなかで客に対して、検温を行わない店は少なくない。ほんとうならば、PCR検査を受けて陰性の人だけの入店を認めることにしたほうがいい。

 それについて、専門家の一部は、PCR検査でも万全ではないと指摘している。しかし、そこまで言われるのならば、すべてはお手上げである。

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