地方銀行業界が揺れている。菅義偉・新首相が「地方銀行は数が多過ぎるのではないか」と発言したことで、“再編の嵐”が吹き荒れるとの懸念が高まっているためだ。
確かに地銀の経営は厳しい。連結純利益は2020年3月期で4期連続の減益となっており、本業の預金を集めて融資を行うことで得られる業務純益に至っては、4割の地銀が赤字に陥っている。しかしその要因は、日本銀行による超低金利の金融緩和政策に起因している。
とりわけ2013年3月に黒田東彦氏が日銀総裁に就任し、翌4月から開始した「大規模金融緩和政策」により、地銀のみならず、金融機関の経営は急激に悪化した。また、年金や保険などの資金運用難にもつながっている。
こうした超低金利政策の“副作用”については、黒田総裁も、
「金融緩和の継続が金融機関の経営体力に累積的な影響を及ぼし、金融システムの安定性に影響を与えることは十分に認識している」
と述べ、その悪影響を認めている。
地銀上位行の幹部は、
「日銀の超低金利政策によって、預金と融資の利ザヤでは利益が出ない状態だ」
とした上で、加えて、
「今は、新型コロナウイルス感染拡大で影響を受けた取引先の支援という“大義名分”により、かなりリスクの高いところへも融資を行っている。こうした融資はやがて不良債権となり、経営を脅かす可能性がある」
との懸念も出ている。
しかし、菅首相の発言の念頭にあったのは、こうした地銀の現状よりも、実は、この11月から10年間の特例措置として施行される「同一県内の地銀同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法」だったのではないだろうか。
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