米社会のさらなる分断深める「一般教書演説」と「民主党予備選」
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「リアリティーショー」

 今回の一般教書演説のもう1つの特徴は、「リアリティーショー」と揶揄されたほどの、過剰な演出である。アフガニスタンに派遣され従軍している米兵士の妻と幼い子供2人に、サプライズで夫を帰還させて議場で感動の対面という見せ場を用意した。

 これは、中東での不要な米軍の関与を減らすという自身の政策メッセージを体現するもので、アフガニスタンのタリバンとの和平交渉への、トランプ政権の真剣さを反映したものでもある。演出過剰とはいえ、長きにわたる対テロ戦争に疲れた米有権者には、効果的な政策メッセージとなった。

 今回の演説内容は、すべてが11月の大統領選挙に向けてのメッセージではあったが、それは大統領自身のコアな支持層に向けた、極端に党派的なものだった。

 特に、差別的な発言で物議を醸してきた過去がある保守派ラジオパーソナリティーのラッシュ・リンボー氏に、民間人への勲章としては最高位の大統領自由勲章を演説中にサプライズで授与し、自身が任命した2人の保守派の最高裁判事にも言及した。

 これは、今年の大統領選挙にトランプ大統領を再選させ、リベラルな価値観が進行するアメリカ社会に対抗して、自らの保守的な価値観を取り戻したい社会保守派、特にキリスト教福音派の支持者への強いメッセージだった。

 社会保守派は、これまでリベラルな最高裁判事に阻まれて達成できなかった人工妊娠中絶の違法化を、第2期トランプ政権の間に、最高裁にもう1人の保守派判事を任命して達成したいと考えている。

 その可能性は十分にある。

 現在、ドキュメンタリー映画にもなり、リベラル派に人気のあるルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が高齢で健康状態も良くないからだ。

 人工妊娠中絶が合法であることの根拠であった1973年の「ロー対ウェイド事件」での、最高裁の「妊娠を継続するか否かに関する女性の決定はプライバシー権に含まれる」という判例を、保守多数の最高裁で覆すことができるという期待は、多くの宗教保守をトランプ大統領への投票に向かわせる効果がある。

 ただしその反面、人工妊娠中絶の争点は、合法化を維持したい女性票およびリベラル層を、民主党候補者への投票に向かわせ、動員数を上げてしまうというリスクもある。

 民主党支持者が多いものの比較的保守的な傾向のある黒人票を、自分に振り向かせたいというトランプ大統領の意思が、今回の一般教書演説に反映したのは間違いない。だから多くの黒人を演説に招待し、黒人層の失業率が史上最低であることにも言及して、自身への支持を訴えたのである。

 もし民主党の大統領候補が、アイオワ州党員集会で1位だったピート・ブティジェッジ氏のような同性愛者、あるいはサンダース氏やウォレン氏のような左派であれば、黒人票がトランプ大統領に向かう可能性はある。

 しかし、人種差別の過去があるリンボー氏への勲章授与は、それらのメッセージをすべて無駄にしかねない行為でもあった。

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