2月4日のドナルド・トランプ米大統領の一般教書演説は、かつてない明るいトーンで、自分の実績を誇らしげにアピールするものとなった。2017年の就任演説での、アメリカは「大虐殺」にあっているという悲観的なトーンから一転、好調な経済、低い失業率という強い経済実績を強調した。
トランプ大統領の自信にあふれた演説ぶりは、単にこの3年で演説手法に習熟したというよりは、1月31日の上院で、与党共和党が新たな証人を要求する民主党の動議をしりぞけ、上院の評決での弾劾罷免回避がほぼ確定した「晴れやかな気分」を反映したものといえそうだ。
「魔女狩りだ」と批判してきたこの不名誉な弾劾訴追が失敗に終わったことで、演説は、今後は議会民主党からの制約からさらに自由になり、自身へのコアな支持者が望む政策遂行に邁進する、というマニフェストとなった。
しかも、直前に行われた民主党のアイオワ州党員集会では、新たに導入した集票アプリの技術欠陥により開票が遅れて、誰も勝利宣言ができず、民主党内には不満と分裂の種が仕込まれた。
注目すべきは、もし候補指名を獲得すれば本選でトランプ大統領にとって最も脅威になりそうな本命のジョー・バイデン前副大統領がまったく振るわず、4位と惨敗したことである。
バイデン氏の不振が、ウクライナ疑惑の影響かどうかはわからない。
しかしトランプ大統領にとっては、あえて弾劾訴追のリスクをとっても、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に、バイデン親子の不正調査を強要した価値があったと納得させる効果もあったはずだ。
また、一般教書演説で米国を壊そうとしていると警告した「社会主義者」のイメージと重なる2人の左派、バーニー・サンダース候補が2位、エリザベス・ウォレン候補が3位に入った。2人のいずれかが大統領候補になれば、民主党は中道派と左派との分裂のリスクを抱えることになる。
つまり、アイオワ州党員集会は、トランプ大統領にとってこれ以上ないほどの結果だった。
米国メデイアでは、トランプ氏がいかに強運に恵まれた大統領か、と皮肉交じりに評された。
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