万一米国とイランが軍事衝突した場合、トランプ大統領は短期決戦を目指すだろう。多数の巡航ミサイルや戦闘爆撃機を投入して政府施設、正規軍の兵営やコッズ旅団の拠点などを叩き、イランの戦闘意欲を失わせようとするのではないか。イラク戦争の開戦時に使った「衝撃と畏怖(ショック・アンド・オー)」という戦術が再現されよう。
トランプ大統領が短期決戦をめざすのは、もし戦いが長期化して米軍の戦死者数が増えた場合、支持率が下がる危険が高いからだ。したがって米軍が大規模な地上軍を投入することも考えにくい。投入してもネイビー・シールズやデルタ・フォースなど少人数の特殊部隊に留まるのではないかと思う。
これに対しイランのコッズ旅団は、緒戦で負けても無差別テロなど、米軍が事前にキャッチできない方法で反撃すると考えられる。
ドイツ政府の外交・安全保障問題の諮問機関である「科学政治財団」(SWP)のフォルカー・ペルテス所長は、ドイツの公共放送局『ARD』とのインタビューで、こう述べた。
「米国とイランの戦争は、非対称型戦争になるだろう。いや、その戦争はすでに始まっているかもしれない」
非対称型戦争とは、正規軍と対決しても勝ち目がないと考える国や組織が、テロ攻撃や艦船の拿捕、航空機のハイジャックなどによって反撃することを指す。アルカイダが2001年に米国で実行した同時多発テロは、その典型である。
ただしペルテス所長は、これまでの米国とイランの間の紛争が死者を出さない形で行われてきたのに対し、ソレイマニ少将殺害によって両国の戦いが違う次元にエスカレートした可能性もあると指摘する。つまり彼はイランが過去になかった形で米国に反撃することは確実と見ている。
1月8日にイランがイラク国内の米軍基地にミサイル攻撃を加えたことは、両国が軍事的に正面衝突する危険が刻々と高まりつつあることを浮き彫りにしている。ドイツのメディアは現在のイランを、
「密封容器の中で水が沸騰して水蒸気の圧力がどんどん高まっているのに、蒸気を逃がす弁がない状態」と形容している。
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