米イラン「軍事衝突」苦悩する「EU」ほくそ笑む「プーチン」
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影の外交担当者

 中東情勢に詳しくない日本人の中には、

 「そもそもなぜイランの軍人がシリアから飛行機でイラクの空港に着き、車に乗ったところで、米国に暗殺されたのか」という疑問を抱いている人が少なくない。確かに、中東情勢は極めて複雑である。この点を理解するには、ソレイマニという人物の特殊性を知らなくてはならない。

 イランには正規軍の他に、イスラム革命を守ることを任務とする革命防衛隊がある。ソレイマニ少将は、革命防衛隊の中のエリート部隊「アル・コッズ旅団」の司令官だった(以下、コッズ旅団)。

 コッズとは、ユダヤ教だけではなくイスラム教の聖地でもあるエルサレムを意味する。聖地の名を冠しているところに、この部隊の重要性が感じられる。「いつの日か聖地エルサレムを奪還する」という意味合いもこめられている。

 1980年頃に創設され、1~2万人の兵力を持つと推定されるコッズ旅団は、一種の特殊部隊だ。武器供与などを通じて、中東地域のシーア派民兵組織やテロ組織を支援し、イスラム革命を「輸出」することを最大の任務としてきた。

 コッズ旅団が支援する民兵組織は、レバノンのシーア派民兵組織「神の党(ヒズボラ)」、イエメンの民兵組織「フーシ」、ガザ地区の「イスラム聖戦機構」、イラクのシーア派民兵組織「人民動員隊(PMF)」など、枚挙にいとまがない。内戦で混乱が続くシリアにも、コッズ旅団は軍事拠点を設置している。

 要するに、イランは21世紀に入ってイラク、シリア、レバノンを経て地中海まで通じる「シーア派武装勢力の回廊」を開くことに成功したわけだ。その最大の殊勲者がコッズ旅団の司令官・ソレイマニ少将だった。

 コッズ旅団が、イランの国防大臣や首相ではなく宗教指導者ハメネイ師の直轄であることも、この部隊の重要性を浮き彫りにしている。ソレイマニ少将はイランにとって、武力と諜報活動で中東での影響力を拡張する影の外交担当者でもあった。1月6日にテヘランで行われた葬儀で、ハメネイ師が涙を流したことは、彼とソレイマニ少将の結びつきがいかに強かったかを示している。

 ここ数年中東での最大の脅威は、スンニ派テロ組織ISが、イラクやシリアに拡大したことだった。米軍のほか欧州諸国もこの地域に派兵して、IS撲滅のための作戦(コード名=「生来の決意作戦」)を展開してきた。この反IS連合軍の司令部は、イラクのバグダッドに置かれている。

 ドイツ連邦軍も約120人の将兵をイラクに派遣し、ISと戦うクルド民兵のために軍事訓練を実施している。

 欧州諸国がIS撲滅を目指す理由は、ISが欧州に戦闘員を潜入させて無差別テロを行う危険を減らすことと、内戦の激化によってイラクやシリアからの難民が欧州に再び流入するのを防ぐためだ。

 シーア派の国イランにとって、スンニ派のテロ組織ISは敵である。このためコッズ旅団は、イラクやシリアでISとの戦闘に参加したり、ISと戦う地元勢力を支援したりしてきた。

 だが、ソレイマニ少将のイラクでの活動の目的は、IS撃退だけではなかった。彼は内戦の混乱に乗じて、イラクのシーア派武装勢力PMFを支援し、同国で影響力を拡大することも目指した。その際に目の上の瘤となるのは、2003年のイラク戦争以来この国に駐留している米軍だ。

 イランは、地元の武装勢力を使って、米軍への攻撃を着々とエスカレートさせた。去年12月27日には、ソレイマニ少将が支援するイラクのPMFが、イラク北部キルクークの米軍基地K1をロケット弾で攻撃し、米国の軍属1人が死亡し、米兵4人とイラク兵2人が重軽傷を負った。

 米軍が報復として2日後にイラクなどでPMFの関連施設を空爆して25人を殺害すると、シーア派民兵組織は大晦日に暴徒を動員してバグダッドの米国大使館に放火し、突入を図った。暴徒たちはPMFの旗を掲げ、殺されたメンバーの復讐を誓った。このとき、米国の海兵隊員たちは暴徒の侵入をからくも食い止め、大使館が占拠される事態は避けられた。

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