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「改憲カレンダー」に組み込まれた「同日選」「国民投票」「増税再延期」
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財政より憲法

 一般の人には、奇をてらった議論に聞こえるかもしれないが、改憲に向けた政治日程は、消費税増税にも影響する。世界経済が不透明感を増し、株価が低迷する中、来年4月に予定される消費税の10%への増税は延期すべきだという意見が、日増しに高まっている。参院選もしくは同日選への影響を心配する政局的な思惑からの増税延期論もある。

 安倍首相はもともと、財務省主導の増税論に批判的だし、14年に衆院解散した際に増税を延期した「実績」もある。側近は「最終的に首相が増税再延期を決める可能性は十分ある」と話す。ただし安倍首相は、経済論や政局判断とは別に「国民投票」も念頭に最終判断することになりそうだ。

 消費税を10%に上げれば、少なからず政権の支持が下がるだろう。仮に今年の同日選で圧勝できたとしても、来年の増税で安倍内閣の支持が下がったら、18年に行おうとしている国民投票はどうなる。

 言うまでもなく国民投票は、改憲を問うものであり、他の政策課題は関係ない。しかし現実問題としては、安倍政権の信任投票の色彩が強くなる。昨年5月に大阪市で行われた住民投票は、大阪都構想を問うものだったが、実質的には橋下徹市長(当時)を「好きか、嫌いか」が問われた選挙だった。

 国民投票を可決させるためには、自分の政権の支持を高値で維持させたい。そのためには支持を下げる要因は避けようとするのは当然だ。消費税増税の延期は、改憲への有効打でもあるのだ。

 消費税増税の延期だけは避けたい財務省のある幹部は「安倍首相は、財政再建と改憲とどちらを取るかという決断を求められれば、改憲を取るでしょうね」と、苦々しげにつぶやく。安倍首相の頭の中では、あらゆる政治判断が「改憲ありき」から始まっているのかもしれない。

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