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「本当の原発発電原価」を公表しない経産省・電力業界の「詐術」
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大臣は使いっ走りか

参院予算委員会で野党から原発再稼働問題への対応を問われ、険しい表情を見せる海江田万里経済産業相。右下はなぜか涼しい表情の菅直人首相=2011年7月7日、東京・国会内【時事通信社】

 当時の経産次官であり、エネルギー官僚として地域独占の過ちを糊塗し続けてきた望月晴文氏が今、内閣官房参与として官邸にいる。本当に日本のエネルギーとして原子力が不可欠なら、安全性や経済性で虚構や欺瞞を重ねるのではなく、正直に発電原価も、隠された費用も明らかにして、国民に問うべきだろう。

 電力料金は「総括原価方式」で決まる。電力会社が社員の給与まで含めてかかった費用全部(原価)と、それに一定(現在は約3%)の報酬(利益)を上乗せして、電力料金収入とするのだから、絶対もうかる左うちわの地域独占である。現在時点での原価を、できうる限り明らかにするのは、電気事業者と監督官庁の契約者に対する義務だろう。

 E=mc2という質量とエネルギーの関係を示したアインシュタインの方程式は美しく、文明をエネルギーのくびきから解放する可能性を秘めている。実はその技術的な可能性を奪っているのが、嘘や騙しや脅しで、人をたばかろうとする利権集団ではないか。血税も含めて巨費を投じた原発には、必要な安全策をしっかり施し、ちゃんと働いてもらうべきだと思う。老朽原発は廃炉にして、原発最優先の歪んだエネルギー政策から、徐々にフェードアウトを目指すべきだろう。それに関するシナリオは既にいくつも提案されており、経産省の原発固執路線よりはずっと現実的なものがある。

 それにしても、九州電力の佐賀県・玄海原発の再稼働で、海江田万里経産相は、国が安全を保証すると言ったそうだが、どうやって保証するのか。国が原子力の安全を保証するのは、行政庁の審査と原子力安全委員会の審査の「ダブルチェック」を受けた場合である。安全委が安全指針の見直しをすると言っている時期に、行政が指示した安全策も途中でしかない玄海原発の安全を、国が保証できるわけがない。それが日本の法制度なのだ。海江田さん、東電本社に日参しているうちに、すっかりムラの住人になってしまったようだ。大臣が役所や企業の使いっ走りをするのは、あまり見たくない。

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