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尖閣問題“燎原の火”を点けた「酒乱船長」の暴走
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“酒鬼”船長と漁船の実態

中国・福州空港に到着し、Vサインを見せる船長=2010年9月25日【AFP=時事】

 「事件直後、事態がかくも拡大・深刻化すると予想する声は、(中国側には)ほとんど無かった。しかしながら、日本の以前とは違う対応に、しばし戸惑い考え込んだ」

 この幹部が言う「以前」とは、2004年3月、中国人活動家7人が尖閣諸島に上陸、沖縄県警が入管法の不法入国容疑で逮捕したものの2日後には処分保留で強制送還した過去を指す。靖国神社参拝をめぐり中国と緊張していた小泉内閣ですら、超法規的に処理していたからだ。

 幹部は、以前よりやや時間はかかるかもしれないが、最終的に日本は前例にならい船長を強制送還するだろうと、逮捕の時点でも「まだ楽観的だった」と吐露した。事件後、中国は直ちに在京の大使館員らを石垣島に派遣、8日午後に海上保安部で初めて面会した後、連日、船長・乗組員から事情を聴いた。船長自身の供述や、漁船の母港である福建省晋江などの情報を総合し、「真相が分かれば、別の落としどころが探れるかも知れない」と期待したのだ。幹部は楽観論の根拠となった“真相”を列挙した。

 �Яツ垢話聾鬼愀玄圓隆屬任呂ǂ佑董崕⓴契Ⅷ鮴挫翔如淵▲襯魁璽訝翔如砲亮魑粥廚巴里蕕譟◆峪檥錣虜櫃砲眷鮗髻淵▲襯魁璽訶戮旅發っ羚饑愁ΕŚ奪ʔ砲鬚△Ľ蠹タ譴靴討い拭廖�14人の乗組員は、今回の出漁に際し臨時募集したメンバーで、乗船するまでお互いの名前すら知らなかった」「事件当時も、乗組員は皆、割り当てられた持ち場で作業中だった。操舵室で舵を握る船長に声をかけたり注意したりできる乗組員はいないし、もともとそんな必要も雰囲気もなかった」「自船(166トン)よりずっと大きな“よなくに”(1349トン)など巡視船3隻に包囲されたのに、全くブレーキをかけないどころか、さらに加速して突進した。狂気の沙汰だと思ったときは後の祭り……展開を想像できた乗組員は1人もいなかった」――。

 「市場経済時代の漁民は恐れ知らず。もちろん、国内外を問わず法律など一顧だにしない。豊漁が期待できる漁場があると耳にすれば即、飛び出す」「かつて北朝鮮の領海に入り海上で漁民が射殺された例もある」「今回の漁船も、台湾・広東沖を回ったが期待した漁獲がなかった。途中、ここ数年は不漁だった釣魚島周辺が今年は豊漁との噂を聞きつけた。釣魚島海域に向かうのは初めてだった」と幹部は内情を解説する。 「当然、日本側も我が国の実情を熟知している」と中国は思い込んでいた。「正直に言えば、保釣運動家(釣魚島を保衛せよ=守れ=と訴える、大陸・香港・台湾にまたがる活動家)はほぼ完全に管理できる」と幹部は漏らし、「けれども漁民は、どうしようもない。いとも簡単に国家の網の目をくぐり抜ける、ジャングル市場経済の先兵ですよ」と苦笑した。

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