記者会見で、藤井裕久財務相の進退について厳しい表情で答える平野博文官房長官=2010年1月6日、東京・首相官邸【時事】
次官廃止を含め、公務員制度改革をどのように進めるかは、今後の重要な分れ道になる。仙谷氏は、次期通常国会への関連法案提出を目指す方針を表明した。これに対して、平野氏は、十二月十五日になって法案提出を表明したものの、次官廃止に限らず、そもそも、公務員制度改革関連法案を次期通常国会に提出すること自体に否定的だった。「時間がかかる」というのだ。
しかし、考えてみると、民主党政権が脱官僚依存を進めていく上で、公務員制度改革は欠かすことのできないアイテムのはずだ。なぜ、これを敢えて先送りすべきという議論が出てくるのか。
答えを先にいえば、労働組合、とりわけ官公労への配慮ということだ。
公務員制度改革は、「労働基本権の拡大」といったスローガンだけ掲げているうちはよいが、いざ具体化となれば、労組にアメを与えるだけで事は済まない。これまでのように、仕事をしなくても昇格・昇給を続け、天下りも含めて終身雇用の保障される“公務員天国”に、メスを入れることが必須になる。それこそ、国民が民主党に期待していることだからだ。
だが、そうなると今度は、官公労に直ちに痛みが及ぶ話だ。つまり、公務員制度改革は、民主党と日本労働組合総連合会(連合)の蜜月関係にひびを入れかねない地雷なのだ。平野氏は、同じパナソニック労組出身の古賀伸明連合会長とはツーカーの仲で、こうした事情を熟知している。参院選前に地雷を踏むわけにはいかない。
思い起こせば、かつて福田内閣で、町村信孝官房長官が“霞が関官僚の傀儡”として公務員制度改革を阻んでいたことがあった。今度は、“官公労の傀儡”として、やはり官房長官が改革を阻んでいる。何やら既視感の漂う光景だ。
そして、拙稿でこれまで何度も指摘してきたことだが、霞が関の幹部官僚と官公労は、“公務員天国”の抜本改革に反対という点で、完全に共闘関係にある。同様の光景と映るのは当然のことなのだ。
こうした構図が分かると、十一月十八日、国会同意人事を経て、人事院総裁に江利川毅前厚生労働次官が就任したことの真の意味も見えてくる。
この人事には、自民党から「日銀総裁の同意人事の際は、天下りはダメといったはずではないか」という強い反発があった。確かに自民党議員の気持ちは分かるが、これを「天下り」の問題と捉えていたら、本質を見誤る。
人事院とは、本来、「中立な第三者機関」として、「使用者=国民」と「労働者=公務員」の間に立つべき機関だ。ところが現実には、「第三者機関」ではなく、“公務員天国”の守護役として、長らく機能してきた。幹部官僚と官公労がともに恩恵に浴す“公務員天国”を、聖域として守り続けてきたわけだ。
今回、谷公士(まさひと)前総裁に続き、事務次官OBである江利川氏が起用されたことは、この人事院という組織を、“公務員天国”の受益者たち、すなわち幹部官僚と官公労の連合軍が、引き続き、“出城”としておさえたことを意味する。おそらく、人選に際し、連合の意向も働いたであろうことは想像に難くない。
江利川人事は、単なる官僚OBによるポスト獲得といった些事ではなく、公務員制度改革の先送りを裏打ちする仕掛けだったとみるべきだ。
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