2018年12月5日夜。筆者は自宅のテレビの前に陣取った。サッカーの天皇杯全日本選手権準決勝、浦和レッズ対鹿島アントラーズ戦を見るためだ。
浦和のオズワルド・オリベイラ監督は、かつて鹿島の監督としてJリーグ初の3連覇を達成した名将だ。18年シーズン途中、開幕から不振にあえいでいた浦和の監督に就任し、Jリーグに復帰。タイトルを目指す大事な試合で、鹿島を相手にどんな采配を見せるのか。試合前からわくわくした。
前半27分。浦和は右CKから、遠いサイドに走りこんだDFマウリシオが頭で先制ゴールを決めた。筆者が思わずうなったのは、そのゴールの後の同じ右CKの場面だ。遠いサイドに今度はDF岩波拓也が走りこみ、ヘディングシュート。これは鹿島のGK権純泰(クォン・スンテ)が辛くも足ではじき、ゴールにはならなかったが、全く同じパターンのプレーでゴールを狙ったからだ。浦和は鹿島戦に備えて、このプレーを入念に準備してきたのだろうと想像した。
その後も、鹿島の反撃の勢いをからめ取るような試合運びでゴールを許さず、浦和は1-0で勝ち、決勝に進出。9日の決勝もベガルタ仙台を1-0で破り、天皇杯を手にした。
オリベイラ監督は、母国ブラジルで多くの名門クラブを率い、2000年にはコリンチャンスの監督として世界クラブ選手権(現クラブワールドカップ)で優勝。カカやロビーニョらブラジル代表の名選手を育てた。07年から鹿島の監督を務め、同年からJリーグ3連覇。07年と10年は天皇杯優勝、11年はナビスコ杯(現ルヴァン杯)優勝。優れた采配は、ファーストネームを取って「オズの魔法使い」と恐れられた。
そして18年は浦和で天皇杯制覇。日本で指揮を執った6シーズンすべてでタイトルを手にしたことになる。
オリベイラ監督といえば、忘れられない試合がある。筆者が鹿島の担当記者になった2009年のJ1第16節、川崎フロンターレと鹿島の一戦だ。
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