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為替相場の理と奔流~時に「暴走」する市場~

「アベノミクス相場」が逆転

 2012年秋に1ドル=80円台という歴史的な円高を経験した為替相場は、15年に一時1ドル=125円台まで下落、円安が定着したかに見えた。安倍晋三首相が就任直後に打ち出した大規模な金融緩和が要因で、産業界はその手腕を高く評価した。しかし、16年の春先から状況が一変。再び1ドル=100円をうかがうレベルに逆戻した中で、日本銀行が16年4月28日の金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送ると円高が一段と加速。円安・株高をもたらした「アベノミクス相場」は逆転する様相を見せ始めた。日本経済の先行きに対する不透明感が強まっている。(時事通信社・舟橋良治)

 12年12月の総選挙で大勝した安倍首相は公共事業を拡大。さらに首相の要請に応える形で日本銀行の黒田東彦総裁は13年4月、「クロダのバズーカ砲」と海外で呼ばれるほどの大規模な金融緩和を断行した。14年10月には市場関係者も予想していなかった追加緩和に踏み切り、一段の円安をもたらした。

 さらに、2%の物価上昇目標の実現が難しくなった事態を受けて日銀は、16年2月にマイナス金利を導入。しかし、「金融政策の有効性に疑念が生じている」(英大手銀)との指摘が聞かれるようになり、大規模な金融緩和を受けた円安、株高の連鎖という「アベノミクス」のシナリオが崩れ始めた。

 通貨当局の期待に反する形で円高・株安が進行した背景には、原油安や新興国経済の停滞、世界経済への先行き不安から、比較的安全な資産とされる円が改めて買われた面も見逃せない。

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