2014年、「STAP細胞」論文をめぐる不正問題は、日本の科学への信頼を揺るがせ、データの扱い方や論文の書き方など研究倫理のあり方を改めて考えさせるきっかけとなった。ただ、捏造(ねつぞう)・改ざん・盗用に加え、研究費の流用などの研究不正はこれに始まったことではない。
過去10年間を見ても、東京大、大阪大、名古屋市立大などでデータの改ざんや別の実験画像の加工・流用が発覚。関係者は解雇や停職などの処分を受けた。
また、製薬大手ノバルティスファーマの高血圧治療薬ディオバンをめぐり、東京慈恵会医科大や京都府立医科大などがその効果を調べる臨床研究で不正なデータ操作に関与していたことは記憶に新しい。
海外に目を向ければ、韓国で起きたヒトクローン胚からの胚性幹細胞(ES細胞)作製に関する論文捏造問題は有名だ。その後、同国ではES細胞の研究が一時中断された。
研究者生命や国の指針をも大きく左右する研究不正。国や大学はその問題に対する取り組みを本格化させ、研究者に求められる行動規範などを学ぶ「倫理教育」を充実させている。一方、論文や実験画像の不正を見抜く高度な「ソフトウエア」の開発が進み、不正を監視する体制も整ってきた。
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