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◆コラム 昭和の時代は女性記者も入っていた〔支度部屋の風景〕②
 若林哲治の土俵百景

2023年04月20日19時00分

ここにも大型化とけがの影響

 現在の国技館の支度部屋は、東西とも幅が9メートル、奥行きが27メートルある。蔵前国技館よりそれぞれ1.5メートル、5メートル広がった(風呂、トイレ部分を除く)。コの字型の上がり座敷には58枚の畳が敷かれ、1985年の開館当初は広々として見えたが、今は狭く感じる。

 幕内の枚数が違うし、関取衆も付け人も体が大きくなった。押し相撲が増え、出番前に出足の稽古を繰り返す力士が多い。付け人の数も増えた。けがを抱えた力士が多く、分厚いテーピングを外し、薬を塗り込み、サプリメントを口にするなど、みんな忙しい。

 それらのスペースを取るため、記者が力士を囲む距離が少し遠くなった。以前は上がり座敷に上り、後ろからも囲んでメモを取った。力士のように低い声は、真正面だと意外に聞きにくい。相手の耳の後ろあたりがよく聞き取れるのだが、今は置いてある持ち物が増えたり、付け人の邪魔になったりで、ほとんど上に上がらなくなった。

 ただ、聞き取りづらくても相撲記者はICレコーダーを使わない。口数の少ない力士の記事を書くには談話だけに頼れないから、さまざまなことをノートにメモする。何より、力士の鼻先へレコーダーを突き出したのでは、「あ・うん」の呼吸も壊れてしまう。

 2011年に力士の携帯電話に八百長の相談とみられるメールが残っていたことが発覚し、大相撲存亡の機といわれて以来、力士の携帯、スマートフォンの持ち込みが禁じられた。だから記者も支度部屋でスマホを取り出してはいけない。

 そのように時代の変化を映しながらも、「究極のミックスゾーン」取材が続いてきた。

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