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◆コラム 横綱・大関がいなくなって
 若林哲治の土俵百景

2023年03月24日18時00分

音楽コンクールの「第1位」なし

 春場所が終わってからでもいいと思ったが、優勝力士その人にケチをつけているように思われても不本意なので、優勝が決まる前に拙稿をアップすることにした。三役で2場所連続2桁勝ち星を挙げた霧馬山らの奮闘によって、来場所以降に希望が見える千秋楽となることを願って―。

 春場所前半の数日、エディオンアリーナ大阪へ足を運んだ。記者席から見上げると、平日でも客席がぎっしり埋まり、満員御礼の垂れ幕が下りている。コロナ対策の緩和で解禁された声援が、文字通り降り注いできた。

 幕内土俵入りが終わると、後ろから観客同士の会話が聞こえた。

 「最後が関脇では締まらんなあ」「そやなあ。横綱土俵入りもないしなあ」

 西方は「最後は大関貴景勝、兵庫県出身、常盤山部屋」と場内放送があると、大きな拍手が起こるが、東方は関脇で終わる。声の主は中高年男性同士で、長年のファンだろうか。久々に相撲見物を楽しみつつ、物足りなさを感じたに違いない。

 館内には若いカップルや家族連れも多く、日本相撲協会公式グッズ売り場は盛況で、夏からは各巡業会場にも出店するそうだが、新しいファンもいずれはこの物足りなさを感じるようになるのではないか。

 そう思いながら帰京したら、貴景勝も休場してしまった。安定感不足の宿命を負った押し相撲で、けがも多い。1横綱1大関になった時から、照ノ富士と貴景勝の休場が重なる心配はあった。元気な新大関が出ない限り、いよいよ初日から横綱・大関不在があり得る番付が続く。夏場所も予断を許さない。

 クラシック音楽のコンクールには、その時の出場者のうちで最も評価が高くとも、一定水準に達していなければ第1位を出さない大会がある。ショパン国際ピアノコンクールは1990、95年の最高が第2位で、ロン・ティボー国際コンクールは最近だと2012、15年のピアノが第1位なしだった。芥川・直木賞に代表される文学賞も「該当作なし」がある。

 若手への励みや業界の経済効果などを考え、評価がボーダーライン上ならばなるべく受賞者を出す方向で審査することはあるが、賞の水準と価値を守るための一線は画す。

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