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現地で見たロコ・ソラーレ涙の五輪出場 北京で挑む「世界一」

輝いた笑顔と涙の輪

 リンクの上で笑顔の輪が広がり、涙が輝いた。オランダのレーワルデンで行われたカーリング女子の北京五輪最終予選。ロコ・ソラーレの日本がプレーオフ初戦で韓国に8―5で勝ち、五輪出場を決めた。2018年平昌五輪で銅メダルを獲得後の重圧や国内の激しい代表争いを乗り越え、今大会は人生で最も難しかったというアイスを密なコミュニケーションで克服。平昌で一大フィーバーを巻き起こした彼女たちが、再び五輪切符をつかんだ激闘を現地で取材した。(時事通信ロンドン特派員 青木貴紀)

◇ ◇ ◇

  藤沢五月が韓国の石をはじき出して勝利が決まると、韓国選手とグータッチを交わして互いの健闘をたたえ合った。待ち焦がれた瞬間が訪れる。「やったー。わぁー」。4人はギュッときつく抱き合い、喜びを分かち合った。重圧から解放され、安堵(あんど)感がこみ上げる。選手の目には自然と涙があふれ出た。

 リードの吉田夕梨花は「自分たちが(五輪に)行きたいのはもちろんだけど、何よりスタッフ、亮二さん(小野寺コーチ)、J・D(リンドコーチ)ともう一度という思いと、人生を変えてまでチームに入ってきてくれた(リザーブの石崎)琴美ちゃんと五輪に行きたいと思っていた。ようやく私たちが望んでいた舞台に戻れる。率直にうれしい」。この言葉を近くで聞いていた石崎も、こらえ切れず涙をぬぐった。

◇コロナ下の不安、難しいアイス

 開幕前日。チームは独特の緊張感に包まれていた。選手は五輪切符が懸かるプレッシャーに加え、大会が無事に開催されるのか不安を抱いていた。オランダは新型コロナウイルス感染拡大により夜間ロックダウン中。無観客開催となり、選手は連日PCR検査を受けた。昨年3月の世界選手権は開幕直前に現地で中止を知らされただけに、吉田夕は「いつ大会が終わってしまうのか分からないので、まず大会を無事に迎えられるように準備したい」と話していた。

 11日の1次リーグ初戦でイタリアに11―6で勝利。第5エンドを終えて4―4と競り合う展開だった。スキップの藤沢は試合後、テレビ観戦した知人から「やっぱりみんな緊張していたんだね」と連絡をもらったという。同日夜のドイツ戦は6―6で最終第10エンドまでもつれ、藤沢が最後に好ショットを決めて振り切った。試合後、サードの吉田知那美は石崎に抱きつき、「すごいアイス。試練だ。つらかった」と率直な気持ちを打ち明けた。

 今大会、日本を含めて苦しんだのがアイスへの対応だった。カーリング会場はスケートリンクに囲まれ、試合中も周りを大勢の愛好者らが滑り、音や声が聞こえる独特の環境。吉田知は「人生の中で一番難しいアイスの一つ」と表現した。

 置きたい位置に止めるドローショットを、石をはじき出すテークショットの感覚で投げなければいけないほど石が滑りにくく、曲がりにくい。試合中はアイスの状態がどんどん変化していたという。吉田知は「全ての感覚や固定概念を捨てて戦わないといけない」と語り、全員で1投ごとに情報を共有し、一から感覚をつくり上げていった。

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