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コロナ禍におけるアメリカ義務教育の変化~デジタル化が急加速~

進む遠隔教育

 日本では新学年が始まったが、新型コロナウイルス(COVIDー19)の影響で休校になり子供の学習を心配する親も多いことかと思う。感染者数で世界最多となったアメリカでも、ほとんどの学校施設が閉鎖された。学校側は、インターネットでの自宅学習への急転換を余儀なくされている。今回は、コロナがアメリカの学校教育にもたらした変化、親や生徒の声を、米メディアで現地の生の姿を取材してきた日本人ジャーナリストがお届けする。(志村朋哉・在米ジャーナリスト)

◇「史上最大の試み」

 これまでのコラムでも繰り返し述べてきたが、アメリカでは3月中旬から連邦政府や地方自治体による新型コロナ対策が本格化した。

  感染拡大速度を緩めて医療崩壊を防ごうと、多くの州で次々と集会、外出禁止が発令された。必須サービス以外は営業停止が命じられ、集団感染のリスクが高い学校施設も次々と閉鎖となった。

 教育専門ニュース機関エデュケーションウィークによると、少なくとも12万4000以上の公立・私立学校が閉鎖され、5510万人以上の生徒が影響を受けているという。既に50州中21州は、今学年度いっぱいの学校閉鎖を命令、もしくは要請している。(アメリカの新学年は8~9月に始まり、5~6月に終わる。)

 その結果、全米中の学校がインターネットを利用した自宅学習に一斉に切り替えるという教育史上まれに見る大変革を迫られた。

 調査会社ギャラップによると、学校が提供するオンライン遠隔教育で子供が学習していると答えた親は、4月第1週で既に83%に達している。高校から小学校まで、教師と生徒はオンラインで授業や課題のやりとりをするようになった。

 いつまで閉鎖が続くかは分からないが、コロナウイルスを機にアメリカの学校教育が変わる、特にデジタル化が加速することは間違いない。

 「これはアメリカ公教育史上最大の試みだ」とオレゴン州ポートランド市のグアダルーペ・ゲレーロ教育長は述べている。

(アメリカの教育制度は日本と大きく異なる。教育行政は州の管轄で、日々の運営は学校区に委ねられている。教育方針やレベルには地域差があり、義務教育期間である小中高の区切りさえも学校区によって違う。アメリカの公教育は多様で一括りに語れないということを念頭に読み進めていただきたい。)

◇自宅学習の様子

 全体を見れば、公教育のデジタル化は、アメリカの方が日本よりも進んでいる。学校区のレベルに関わらず、生徒が授業でノートパソコンを使うのは小学校ですら当たり前になってきている。

 例えば、筆者が暮らすカリフォルニア州アーバイン市では、生徒がいつでも一人1台、クロームブック(クラウド使用を前提とした安価なノートパソコン)から高速回線にアクセスできるよう学校のインフラが整えられている。小学生であっても、Googleドキュメントなどのクラウドサービスを使って、作文やリサーチ、グループワークをこなす。

 なので、遠隔学習への移行は比較的スムーズだった。

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