世界でも群を抜く1800万人を超える新型コロナウイルス感染者と、32万人以上の死者を出しているアメリカ合衆国。コロナに翻弄された2020年が終わりを迎えようとする今も、感染が再び急増している。市民のコロナ疲れやワクチンの普及具合などの現状を、ピューリッツァー賞に輝いたこともある米地方紙で記者として働いていた日本人ジャーナリストが、肌感覚とデータを交えて解説する。(志村朋哉・在米ジャーナリスト)
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11月に入り、アメリカでは新規感染者数が爆発的に増えた。
ロックダウンが解除され始めた夏に、一日に7万人以上を記録して騒がれたが、今では20万人を超えている。死者が3000人を超える日も出てきた。これは、2001年の同時多発テロの死者数を上回る。
筆者の暮らすロサンゼルス郊外のオレンジ郡でも、人口320万人にもかかわらず、1日当たりに日本全体を上回る3000?4000人の感染が確認されている。病院の集中治療室(ICU)はキャパオーバー寸前。野外テントやトレーラーを設置する病院も出てきた。
「郡内の病院にはコロナ患者が殺到している」とクレイトン・チャウ保健局長は、オレンジ郡議会で述べた。「緊急治療室にやって来ても、待っている人であふれていて、すぐに診てもらえない状況です」
ここまで被害が拡大した大きな原因は、規制疲れと気の緩みに他ならない。
多くの州では、3月から集会や経済活動が制限され続けてきた。
バーは営業禁止で、飲食店はテイクアウトや配達のみ。映画館や美容室、フィットネスジムなどは営業停止と再開を繰り返している。多くの職場ではリモートワークが続く。学校も部分的な再開に止まる地域が多い。
その甲斐もあり、全米で最も人口の多いカリフォルニア州では、当初はニューヨークなどに比べ、感染者を抑えてくることができた。
しかし、人と会えないストレスが溜まり、夏以降は外出する人が目に見えて増えた。
一時は慢性的な渋滞で知られるロサンゼルスの高速から車が消えて驚いたが、今ではラッシュ時には渋滞に巻き込まれるようになった。
週末のレストランには行列ができ、ショッピングセンターには人だかりが戻っている。
近所でも、人が集まって話したりパーティーをしたりする光景を目にする。しかも、寒い季節になり、感染リスクが高い屋内での活動が増えている。
ハロウィーンの夜には、偶然に通りかかった建物でダンスパーティーが開かれていて、マスクをしない人々が次々と入っていくのを目撃した。
なるべく自宅で過ごすよう政府がお願いしていたクリスマス休暇の週にも、一日当たり100万人以上が空港を使用した。昨年比で40%減だが、ロックダウンが始まった3月中旬以降では最多を記録した。
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