日本銀行が2016年4月28日の金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送ったことを受けて、株価が急落、円高も進行した。安倍政権の発足後、上昇を続けていた株価の先行きが楽観視できない状況になりつつある。16年3月31日の日経平均株価は1万6758円で、前年度末を5年ぶりに下回った。大規模な金融緩和がもたらした「アベノミクス相場」が始まった12年以降、初めての事態だ。16年3月末の東証1部の時価総額は500兆円。一年で約56兆円減少した計算だった。(時事通信社・舟橋良治)
安倍政権発足前の12年秋、株価は9000円を割り込んでいたが、黒田東彦日銀総裁が13年4月に「クロダのバズーカ砲」と海外で言われるほどの金融緩和を断行。13年の1年間で5割を超える株価上昇を記録した。
この金融緩和は、国債を年50兆円規模で買い増すのが柱。50兆円は年間の新規国債発行額に匹敵する額で、物価上昇率2%の達成が目的とされているが、「禁じ手」とされる国債の日銀引き受けを市場を通じて行っていると言えなくもない。さらに、黒田総裁は14年10月、市場関係者の意表を突く形で追加緩和を実施した。
近年の円高に苦しんでいた産業界は、金融緩和を受けた円安を歓迎。企業収益を押し上げるとの期待に加え、世界的な金融緩和が株高を後押し。15年6月24日に株価は2万0868円まで上昇し、ITバブルに沸いた2000年の最高値を超えた。
雲行きが変わり始めたのは、15年の8月。9月までの2カ月で3200円という急落を記録。2%の物価上昇目標達成が難しい事態に陥ったこともあって日銀は16年2月にマイナス金利を導入した。かつてない金融緩和にもかかわらず、急速な円高が進行。原油安や新興国経済の停滞、世界経済への懸念などが重なって投資家の不安心理が増幅し、株価は1万5000円を下回る場面も出ていた。
株価は半年後の経済の実態を映すとも言われる。
安倍政権下で起きた株価上昇は、将来的な企業収益の増大や景気回復を見越しての動きだと言えるのか。それとも、景気回復を伴わない、金余りがもたらした「バブル」なのか。答えが分かるまでには、しばらく時間がかかるだろう。
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