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「吉田調書」記事は取り消し~朝日社長が会見

進退は改革後に判断

 朝日新聞社の木村伊量社長は11日、東京本社で記者会見し、東京電力福島第ー原発事故をめぐる「吉田調書」に関する報道について、「『命令違反で撤退』との表現を取り消す。読者や東電関係者に深くおわびを申し上げる」と謝罪した。また、編集担当役員の解職を表明するとともに、自身も社内改革後に進退を判断する考えを示した。

 記者会見での主な発言内容は次の通り。

【木村伊量社長の冒頭発言①】 東電福島第1の政府事故調が作成した吉田調書を非公開の段階で独自入手し、5月20日に一報した。震災4日後の3月15日朝、第1原発にいた9割の650人が吉田所長の待機命令に違反し、10キロ南の第2原発に撤退したというものだった。吉田所長の発言を紹介して過酷な事故の教訓を引き出し、政府に全文公開を求める内容だった。しかし、社内精査の結果、吉田調書を読み解く過程で評価を誤り、命令違反で撤退という表現を使った結果、多くの社員が逃げ出したかの印象を与える間違った記事だと判断した。「命令違反で撤退」の表現を取り消すとともに、読者、東電の皆様に深くお詫び申し上げる。

 これに伴い、報道部門の最高責任者、杉浦信之編集担当の職を解き、関係者を厳正に処罰する。経営トップ、私の責任も逃れません。報道、朝日に対する読者の信頼を大きく傷つけた危機だと重く受け止めており、私が先頭に立ち編集の抜本改革など再生に向けて、おおよその道筋を付けた上で、速やかに進退を決断する。その間は、社長報酬を全額返上する。朝日が独自取材に基づいて報じなければ、世に知らされることはなかったかもしれない。世に問うことの意義を大きく感じていただけに、誤った内容の報道となったことは痛恨の極み。

 記者の思い込み、記事のチェック不足が原因と考えているが、新しい編集担当を中心に信頼回復と再生のための委員会を早急に立ち上げ、取材、報道上の問題を抉り出し、信頼回復に何が必要かゼロから再スタートを切る決意で検討いただく。

 誤った記事がもたらした影響について報道と人権委員会(PRC)に審理を申し立てた。その結果は紙面で知らせる。

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