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42歳母たちの「保活」

高齢出産、動揺の日々

 2013年5月、男児を産んだ。厚生労働省の統計によると、「第1子出生時の母の平均年齢(13年)」は30.4歳。これ自体、結婚・出産の高年齢化を示すショッキングな数字だが、さらにそこから遅れること10年余、42歳での高齢出産だった。

 社会に出て仕事を始めてから、気が付けば約20年。その間ずっと、記者として取材をしてきた。最初は知らない相手に電話をするだけで、声が震えたものだが、20年もするうちに、心も体も無駄にずぶとくなり、多少のことでは動じなくなっていた。

 それが、子どもを産んでからの日々は、動揺の連続。ベビーカーを転がし、初めて地下鉄に乗った日の緊張は、忘れることができない。新聞やテレビで、公共交通機関にベビーカーで乗り込むことの是非が、かんかんがくがく議論されていた。誰かにぶつかって、舌打ちされるようなことがないように、とにかく隅っこに停車。泣き声を上げませんようにー。心の中で、ひたすら祈った。

 しかし、昼下がりの地下鉄車内に、想像していた悪意は潜んでいなかった。むしろ、好意に接することの方が多かった気がする。よほど憔悴(しょうすい)して見えたのか、「疲れるでしょう」と、女性に席を譲ってもらったことも。「私にも生まれたばかりの孫がいるから、大変なのは分かるのよ」と笑顔で語ったその女性は、自分とそれほど年齢が違うようには見えなかった。

 少し前までは、「ママ友」など、地球の裏側より遠い世界の言葉に聞こえていたが、意外にも多くの「高齢出産仲間」ができた。高校の同級生によると、9人もの同級生が42歳となる13年中、出産。交流サイト(SNS)などを通じ、お互いが妊娠中であることを知り、それ以来、何かと連絡を取り合っている。うち4人とは最近も子連れで会った。きっと今後も、励まし合い、助け合っていけるのではないかと、頼みにしている。

 しかし、すべり出し順調だった高齢新米母生活に、最大の動揺をもたらしたのが「保育園問題」。就職活動の「就活」をなぞらえて言われる保育園探しの「保活」は、想像していた以上に厳しかった。高年齢に不利な選考基準など、思わぬ落とし穴も。同じ1971年に生まれ、偶然にも同じ13年5月に第1子を出産した友人2人の体験とともに、「42歳の保活」を報告する。(時事ドットコム編集部・沼野容子)

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