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問われる生命の重み ペットショップの裏側で

売り方はどんどん巧みに

 直接話を聞いた3人に共通していたのは、最大のネックは「消費者意識」だという点だった。杉本さんは「生体販売をめぐるひどい話を聞いたことはあっても、自分の近所のショップの子たちは違うだろうと都合よく考える消費者は多い」と指摘する。「そういう消費者が欲望に負け、目の前のかわいいものを衝動買いして(そして捨てて)しまう。やはりモラルある消費行動抜きでは、ペット業界もよくならない」という。

 売り方も巧みになってきている。最近ではペットショップから買うのではなく、不幸な境遇から救出された「保護犬・保護猫」を里親として迎える人も増えている。しかし、杉本さんによると、ショップで売れ残ったり、繁殖期を過ぎてブリーダーが手放したりした個体を保護犬・保護猫と偽ってネットで里親を里親募集し、店頭販売とさほど変わらない高額で売りつける業者もいる。善意を悪用した商法だが、筆者も保護猫の里親探しをする中で、そうした被害に遭いかけた里親希望者に何度も会ったことがある。

 上原さんも「保護犬・保護猫ブーム」を商機ととらえる悪質な業者が多数存在することを認め「業界で話し合って改善を求めることもあり得る」と語った。町屋さんは、消費者が悪質なブリーダーやショップを見分けるためのチェックリストを作り、協会のサイトで公開している。

 犬や猫は、法的に見てもかなり私たちに近づいてきた。私たちも彼らを「物」ではなく、家族の一員だと「心底から」考えるべきではないだろうか。

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 草枕 信秀(くさまくら・のぶひで) 複数のメディアで記者や編集者を務め、フリーに。現在は野良猫や捨て猫の不妊手術、里親探しに携わりながら、ペット問題を含め幅広く取材活動をしている。(2021年3月11日掲載)

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