2023年04月01日14時00分
中国国家統計局は1月、2022年末時点の中国(台湾、香港、マカオを除く)の総人口が前年比85万人減り、14億1175万人になったと発表した。
減少は61年ぶり。年齢構成では、16~59歳の生産年齢人口が8億7556万人で全国人口の62.0%を占め、60歳以上は2億8004万人で全人口の19.8%、65歳以上は2億978万人で、14.9%となった。
◆衝撃的な数字
政府が発表した最新データの中で、最もインパクトがあったのは新生児の数である。22年の出生数が956万人。この数は「一人っ子政策」が撤廃された16年の1867万人に比べ、約半分に減ったということであり、その減少数は衝撃的だった。
新生児の急激な減少の背景には、中国の結婚件数が年々減少していることがある。昨年、中国民政部が発表した統計から見ると、22年の結婚件数は700万である。これに対して、10年前の12年の結婚件数は1323万だったので、10年間で半分近くに減少した。
急速な経済成長とともに、社会の競争が激しくなった上、不動産価格や教育費などが高騰した。そのため、若者は結婚や出産に対し総じて悲観的なムードになっている。
最大経済都市の上海では、市政府が最近公開した「上海2022年年次人口監視統計」によれば、合計特殊出生率がわずか0.7である。
そして、SNSでは「自分を養うことすら精いっぱいなのに、どうやって家庭を築き子どもを育てていくのか」「子どもを産むことに対して大変不安だ」などのコメントが常にあふれている。
◆農村まで出産意欲低下
しかも、現在、中国の少子化は都会の問題だけではなくなり、農村部まで深刻さを増している。
これまで農村部では「労働力が欲しい、家の後継ぎが必要」という伝統や、「多子多福(子が多ければ幸福)」のような考え方があったため、人々は子どもを多く望み、出生率が高かった。
ところが、武漢大学社会学院が農村部で行った大規模調査によると、農村部の若者のうち、約3割は全く子どもを産むつもりがないという。また、子どもは1人だけが良いと思う人が38%、2人までは32%、3人はわずか1.75%との統計である。
さらに農村部の90後(1990年代生まれ)と00後(2000年代生まれ)の若者は、出産意欲が特に低いと調査報告が付け加えた。
その理由は、社会の進歩や情報通信の発達につれ、農村の若者の居住地がどこであれ、彼らの生活様式が親世代と大きく変わり、考え方が段々と都市化した、というのが調査チームの専門家の分析である。
◆あの手この手の出産奨励策
このような現状を踏まえて、中国政府は何としても出生率を上げようと、さまざまな出産奨励政策を打ち出している。
例えば、3歳以下の乳幼児に掛かる養育費を個人所得税の控除対象にする。各地方政府も、あの手この手で出産数を増やそうと躍起になっている。
中国の自治体の中で最初に育児補助金の支給を始めたのが 四川省の攀枝花市だ。21年に、第2子、第3子を持つ家庭を対象に、子ども1人につき3歳まで毎月500元(約1万円)の育児補助金を支給すると決めた。
その後、多くの地域が似たような政策を相次いで発表した。育児補助金のほか、住宅購入時の優遇や保育園補助金制度、女性の産休期間拡大を含め、子育て、教育、母子の健康など、多方面にわたり、出産支援に力を入れている。
そして先日、四川省は、未婚者にも出産を認め、出産保険や出産休暇を提供するというので、中国で大きく話題となった。この未婚者に対する出産対策は、今後ほかの地域も追随すると予測されている。
「一人っ子政策」が7年前に廃止され、その後、3人までもうけられるよう緩和されたが、少子化は歯止めがかからない状況が変わらないどころか、ますます深刻になっている。
専門家は「一人っ子政策のツケはあまりに大きい。子どもを安心して産める環境がないと、子どもを増やすのは難しい」と指摘している。
(時事通信社「金融財政ビジネス」より)
【筆者紹介】
王 青(おう・せい) 日中福祉プランニング代表。中国・上海市出身。大阪市立大学経済学部卒業。アジア太平洋トレードセンター(ATC)入社。大阪市、朝日新聞社、ATCの3者で設立した福祉関係の常設展示場「高齢者総合生活提案館 ATCエイジレスセンター」に所属し、 広く福祉に関わる。
(2023年4月1日掲載)
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