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「正解のない時代の子育て」、親にしかできない役割とは?

2022年04月12日15時00分

母親の8割が「子育てに不安」

「良い大学に入り、一流企業に就職すれば安心」―私たちが幼かった頃、多くの方にとって「目指すべき」とされていたはずの考えが通用しなくなってきている現代。その中で今、日々子どもと向き合う親たちが抱えているのが「わが子にとって何が『正解』か分からない」という不安や迷いではないかと感じています。

 昨年2021年に発表された家庭教育に関する文部科学省委託調査によると、0~18歳の子どもを持つ母親の8割近く、父親の6割以上が「子育てに関して不安を感じる」と回答(※1)しているそうです。今回はそんな「正解のない時代の子育て」について、教育関係者、そして高校に通いながら起業家としても活躍する現役高校生親子にインタビューしてみました。

 イチ母親でもあり、この5年ほどで子育て関連の取材記事を100本近く執筆してきた筆者の等身大の目線で、現代の親が大切にしたい視点やアプローチを探っていきたいと思います。(ライター・佐々木はる菜)

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教育情報が氾濫する社会

 今回まずお話を伺ったのが、家庭の子育てを支援するママプロジェクトJapan(東京)代表取締役の岩田かおりさんです。

 自身も1男2女の母で、これまで7000人以上の親子の悩みに伴走、大手企業や自治体での子育て講座なども定期的に担当し、悩める子育て世代から多くの支持を集めている岩田さん。

「教育は、保育園・幼稚園・学校などの『公教育』、習い事や塾などの『民間教育』、そして家庭が担う『家庭教育』の大きく三つに分類されますが、私が主宰する『かおりメソッド』では『家庭教育』に特化した講座を提供しています。

 いわゆる“勉強”を教えるのではなく、子どもたちに“勉強って楽しい”と感じさせる家庭環境の整え方や我が子へのアプローチ方法を、誰でも再現できるように体系化してお伝えすることで、子ども自身で自主的に楽しく学ぶことのできる”学び体質”に育てることを目指しています」

 日々たくさんの親子の悩みに触れる中で岩田さんが感じているのが、教育情報の氾濫が親たちの不安に追い打ちをかけているということです。

「例えば『〇歳までに始めないと遅い!』といった言葉が独り歩きしたり、人気の中学受験塾は小学校入学前の時点で『順番待ち人数が既に3桁』と言われたり…といった偏った情報や、SNS等の浸透で他者と比較する機会が格段に増えたことなどに振り回され焦燥感を募らせた結果、ある面では教育熱心な親ほど迷い、仕事に育児に忙しい日々の中で混乱し、親子で必要以上に苦しんでしまうケースも少なくないと感じます」

子育ての正解を、「外」に求めてしまう親が増えている

 また、特にこの数年、「どんな習い事をいつからさせたら良いか」「塾に行かせた方が良いか」というような質問を受けることも非常に増えたそうですが、本来それらは当然ながら親自身が考え判断するべきこと。

 検索すればすぐにそれなりの答えにたどり着ける時代となったせいか、「子育てについても、親自身の考えや感覚に従ってじっくり考えるよりも前に、つい答えや正解を外に探してしまう傾向が強くなったのではないか」とも話します。

「私はよく、親子それぞれの特性や家族構成などを踏まえず悩みの答えを外部に求めることが“地獄のスタート”だとお伝えしているのですが(笑)、子育てでまず大切なのはやはり、目の前のわが子と向き合いじっくり観察し、ご自身で考え判断する積み重ねを続けていくことだと思います」

「わが家流」を育むことの大切さ

 家庭運営や子育ては、ある意味では会社経営と一緒ではないかと話す岩田さん。

「どんな企業でも理念がないと進む先が分からず、そこに属する社員は混乱してしまいますよね。同じように『我が家はこの考えを大切にします!』という子育ての軸ができると、自分たちにとって必要な情報も判断できるようになり過剰に振り回され苦しむこともなくなります。

 そんな『わが家流』を育む大切さこそ、今の世の中で子育てに向き合う親御さんたちに一番伝えたいことだと考えています」

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