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Shigekix半井重幸が語るブレイクダンス

新採用のパリ五輪で金メダル候補

 昨夏の東京五輪はスケートボードに代表されるアーバン(都市型)スポーツで10代選手の活躍が印象的だった。2年後の2024年パリ五輪では、同様に若者に人気の高いブレイクダンスが初めて実施される。軽快な音楽に合わせた踊りの技術や創造性を競うこのスポーツで、世界的に活躍するのが半井重幸。「Shigekix」(シゲキックス)のダンサーネームで国際大会優勝を重ね、パリでも金メダル候補になりそうな19歳に話を聞いた。(時事通信運動部 山下昭人)

◇ ◇ ◇

 ブレイクダンスは「ブレイキン」が本来の名称で、1970年代の米ニューヨークが起源とされる。貧困地区だったブロンクスでギャングが殺し合いをせずに勝負する手段として、踊りで競い合う形式が定着したと言われ、ヒップホップなどの音楽やファッションとともにカルチャーとしても発展を遂げた。日本ではテレビ番組などを通じて徐々に認知度が上がり、幼少期から取り組む少年少女も多い。

 神奈川県の川崎駅や武蔵溝ノ口駅、大阪府の難波駅などはダンサーの活動場所として以前から知られている。四つ上の姉、彩弥(ダンサーとして活躍中)の影響で7歳からブレイクダンスに取り組む半井も、地元の大阪を拠点に練習を重ねてきた。

 「僕は見よう見まねでやり始めたような感じなので。ストリートが練習場所。スタートはそんな感じです。駅の近くや、ちょっとしたスペースで、人が通っても邪魔にならないような場所を探して、開拓するようにやってきた。今はスタジオがあるのが当たり前だったりするんですけど」

◇強みはアドリブで踊る音楽性

 10代前半から頭角を現して国際大会で活躍し、14歳で初のスポンサー契約を結んで「プロ」としての一歩を踏み出した。18年の世界ユース選手権を制し、同年のユース五輪では銅メダル。20年には世界最高峰の大会「Red Bull BC One」で歴代最年少の18歳で優勝を遂げるなど華々しい戦歴を誇る。

 ブレイクダンスの踊り手は「BBOY」(ビーボーイ)「BGIRL」(ビーガール)と呼ばれ、DJが鳴らす音楽に合わせた演技を対戦相手と入れ替わりながら行う。日本ダンススポーツ連盟によると、基本的な演技構成は①立った状態でステップを踏むなどのトップロック②かがんで素早い足さばきをするフットワーク③頭や肩を床に付けた回転技のパワームーブ④音に合わせて動きを止め、ポーズを決めるフリーズ―、の四つ。審判が技術や多様性、創造性、音楽性などの観点で採点して勝敗を決める。

 流される曲は事前に知らされず、瞬時に対応できる能力が求められるが、半井はこの分野を最も得意とする。リズムを素早くつかみ、曲が小休止すればタイミングよく動きを止めてポーズを決め、観客を沸かせてみせる。

 「細かいことで言うと、僕はミュージカリティー(音楽性)をすごく意識しているダンサーなのかなと思います。音楽とどれだけ合っているかというのがブレイキンのすごく大事な要素の一つなんですけど、そこを重視して、強みにして戦っている。そんなプレースタイルかなと思います。もうちょっと大きい枠で言うと、楽しんで戦う、その瞬間を味わって楽しんで戦うというのも自分のスタイルの一つかなと思いますね」

◇頭と科学を使うトレーニング

 最近のブレイクダンスの国際大会では、優勝までに数分間の演技を短いインターバルで何試合もこなさなくてはならない。日本連盟の石川勝之ブレイクダンス本部長は「100メートルダッシュをしている間にスクワットと腕立て伏せをするようなイメージ。世界で活躍する選手にはスタミナ、高い集中力、モチベーションをコントロールする力が求められる」と話す。より競技性が高まり、アスリートとしての地力が求められているようだ。トレーニングに関して半井に聞くと、それを反映したような答えが返ってきた。

 「12年くらいやっていて練習内容は変わってきてはいるんですけど、一貫して変わっていないのは頭を使うこと。肉体的に練習できる量はやっぱり限度があるので、同じ練習時間の中でどれだけ差をつけるかを考える。小学生の時からそう思ってやっていた。

 現時点ではブレイキン自体の練習はもちろんですけど、それにプラスアルファしてフィジカルを鍛えるためのサーキットトレーニングを取り入れたりして、少しスポーツ科学的な観点からも自分のブレイキンの踊りを成長させるように意識して取り組んでいます。スポーツ的な、アスリートとしてのアプローチの仕方は以前に比べて確実に高まっているかなと感じます」

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