2021年11月15日
国際政治を専門とする大学教員が英語を話せなかったり、仏文学者がフランス語を読めなかったりしたらどう思うであろうか。北朝鮮を研究対象とするにあたって朝鮮語(韓国語)の習得が欠かせないのは言うまでもない。
私は帰国子女ではないし、下⼿の横好きではあるものの、さまざまな外国語にチャレンジしてきた。大学は英語ではなくフランス語で受験し、⼤学院受験に必要な⼆カ国語は、朝鮮語と中国語を選択した。全くモノにならなかったがロシア語を履修したこともある。
しかし、どんなに勉強しようとも、使わない語学は錆びてしまうもので、4年近く滞在した中国の言葉も、⼝からスムーズに出なくなってしまった。現在、なんとか使えるのは朝鮮語だけである。
コロナ禍で自宅にこもる時間が⻑くなったこともあり、今年に入ってからベトナム語の勉強を始めた。グループレッスンも個⼈指導もオンラインで多様な講座が⽤意されているもので、周りにベトナム人がいなくとも会話練習が可能な時代である。
朝鮮語と中国語を学んだ者にとって、ベトナム語ほど⾯⽩い⾔語はなく、思いのほかハマってしまった。発⾳は難しいとされるが、語末子音(終声)が多様な朝鮮語と、声調のある中国語の特徴を双⽅掛け合わせたようなもので、何とか乗り切れる。
⽂法は、少なくとも⼊門、初級段階においては⾄極簡単。中国語と同じく孤⽴語という分類に属し、語形変化が⼀切ない。英語を学びはじめた時に誰もが苦労した、過去形の不規則活⽤を覚えるなどの労⼒は全く不要なのだ。
日本人にとって最⼤の利点は単語の覚えやすさだろう。「⾼速道路」や「調味料」、さらには「微妙な三角関係」など、日本語でそのまま読めばソウルで通じてしまうほど、日本語と朝鮮語が似ているのはよく知られているが、ベトナム語もそれに準じている。音の高低を⽰す声調があるため日本語と完全に同じ⾳ではないものの、注意は「チューイーchú ý」、⾐服は「イーフクy phục」、楽観は「ラックァンlạc quan」と発⾳すればよい。
これは、日本語も朝鮮語もベトナム語も漢字由来の⾔葉が多いことに起因する。朝鮮語は主にハングル(朝鮮⽂字)で表記し、ベトナム語は漢字を完全に廃⽌してアルファベットを活⽤しているが、根は同じ、漢字文化圏なのだ。日朝越中の四カ国語は、漢字由来の単語を抱えているからこそ、共通点が多い。
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