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サボテンが食料危機を救う!? 観るだけでなく食べてとPR推進 愛知県春日井市

需要喚起し作り手増やす

 「サボテンはおいしく食べられる」―。サボテンを種から苗に育てる「実生栽培」発祥の地とされる愛知県春日井市は、観るだけでなく食べることができるサボテンの魅力を市内外に伝えようと、2021年度から本格的にPR事業に乗り出した。観賞用のイメージが強いサボテンだが、厳しい環境下でも育つことから、市の担当者は「昆虫食と並ぶ注目食材。サボテンが食料危機を救うかもしれない」と意気込む。(名古屋支社・萬紗帆)

 春日井市ではもともとモモやリンゴといった果樹栽培が盛んで、サボテン栽培は1953年ごろから副業として始まったとされる。その後、59年に襲来した伊勢湾台風で果樹が甚大な被害を受けたのに対し、サボテンの被害は少なかったことが転機となり、主体をサボテン栽培に切り替えたという。春日井産のサボテンは種から苗を育てて大きくする栽培方法で全国的にも珍しく、2006年にはサボテンと多肉植物の生産量は全国1位となった。市はサボテンを特産品・ブランドと位置付け、同年から春日井商工会議所を中心にPRや食用の「ウチワサボテン」を使った商品開発などに取り組んできた。

 市は、学校給食でも07年から地産地消の給食として「サボテンスープ」や「サボテンコロッケ」といったメニューを取り入れたり、社会科見学先にサボテン農家を選んだりするなどしており、市経済振興課の藤井隆史課長は「子どもたちへは浸透している」と説明する。21年度からは市が主導して、より一層、市民に愛着を持ってもらうとともに認知度を向上することを重点に、情報発信などに取り組むことにした。

 最盛期には市内で70軒あったサボテン農家は、後継者難などから4軒にまで減少している。実生栽培は種から出荷できる苗にするまでに3年程度かかるため、出荷が軌道に乗るまでの支援も必要とされるが、現在はそうした支援の仕組みもなく、作り手の不足は深刻だ。一方、食用として栽培されるウチワサボテンは1年足らずで出荷でき、温室があれば年中栽培することが可能。食用サボテンを育てる農家は現在、国内に3軒、うち2軒が市内にある。卸先は主にメキシコ料理店だが、需要もまだまだ少なく十分賄える状況だという。市は、需要が増えれば作り手も増えるとして、生産者を支援する制度の検討とともに、需要喚起のためサボテンの食べ方の情報発信を推進している。

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