会員限定記事会員限定記事

「国に帰れ」殺到した中傷  柳美里さんの思う「投票」の本質

2021年11月06日10時00分

 ー今回の衆院選で感じたことは。

 私は東京電力福島第1原発の旧警戒区域に住んでいるので、各党がエネルギー政策をどう考えるのか注目していました。2011年の原発事故で、今も広大な国土が帰還困難区域となったままです。総理大臣になられた方は皆さん、被災地を訪れ、東日本大震災・原子力災害伝承館(福島県双葉町)などを視察されますが、私はいつも除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設予定地の中にあるお宅に上がってみてほしいと思っています。予定地には家もあり、学校もあり、墓地もある。政治家には、あの事故で何が失われたのかを知っていてほしいんです。それと同じように、家のある人はない人のことを、豊かな人は貧しい人のことを、命や国籍や投票権を持っている人は持っていない人のことを想像するということが、投票という行為の本質なのではないかと、私は思っています。


柳美里(ゆう・みり) 1968年茨城県土浦市生まれ。高校中退後に劇作家として活動し、93年に「魚の祭」で岸田國士戯曲賞を最年少受賞した。94年「石に泳ぐ魚」で小説デビュー。97年「家族シネマ」で芥川賞、2020年「JR上野駅公園口」の英訳版で全米図書賞翻訳文学部門を受賞。福島県南相馬市在住。

(2021年11月6日掲載)

どうする◆外国人参政権 バックナンバー

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ