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「うんこ」と県警がコラボした!? 下品な言葉が子どもを引き付ける理由

2021年11月11日10時00分

◇タブーが「魔法の言葉」に

 4~5歳ごろになると、下品な笑いもピークに達する。この年頃は「仲間を意識し、仲間の前で自分を表現し、受け入れてもらいたい」と願い始める時期だ。それまで多く見られていた1人遊びや平行遊びは次第に影を潜め、代わりに連合遊びや協同遊びが多く見られるようになる。単独で遊ぶのではなく、仲間と交流し、仲間との遊びを楽しむようになるのだ。

 自然と子どもは仲間とともに楽しく笑い合いたいとも願うようになるわけだが、この笑いをつくり出すことは意外と難しい。なぜなら、先に述べたように、笑いを生じさせるためには現実との間にズレをつくり出す必要があり、それがそもそも「現実とは何か」をまだ十分に認識していない4~5歳の子どもにとっては難しいのだ。

 しかし、それでもやっぱり仲間と楽しく笑い合いたい。そんなとき、手っ取り早い方法として子どもたちの前に現れるのが、下品な笑いだ。下品な笑いをつくるには、現実とのズレを意識的に操作するなどといった高度な知識や技術は必要ない。ただ「うんこ」と言うだけでドカンと笑いが生じる。幼い彼らにとって「うんこ」という言葉は、仲間と楽しく笑い合うための、いわば「魔法の言葉」なのだ。

 やがて5~6歳ごろになると、また状況は変化してくる。このころになると、ほとんどの子どもがひらがなの文字を読めるようになり、言葉を巧みに使用しながら仲間同士の関係を深める姿が見られるようになる。言葉によって笑いをつくり出すことが少しずつできるようになると、下品な笑いは急速に彼らにとってレベルの低い笑いへとなり下がっていく。そして、いまだにそうした笑いに頼っているものを見掛けると、「へぇー、まだそんな笑いで楽しんでいるんだ…」といった感じで、若干さげすんだ目で見るようになる。

 とはいえ、こうした変化は言葉によるコミュニケーション・スキルがいち早く発達する女子に特に当てはまることで、男子にはあまり当てはまらないのかもしれない。実際、仲間と楽しくイチャつきたいが、言葉巧みに笑いをつくり出すことが苦手な多くの男子は、小学校に上がってからも相変わらず下品な笑いに手を染め、ゲハゲハと笑って楽しむということをよくやる。

 最初に述べた「うんこ・ちんちん原理主義」はもちろんのこと、仲間がスキだらけのお尻をうっかり自分のほうに向けようものならすぐに彼らはカンチョーをするし、ノートに余白があると延々とうんこの絵を描くし、教科書に人物の写真があるとすぐに頭の上にうんこを乗せたりする。言葉巧みに仲間とコミュニケーションを取ることが苦手な男子にとって、下品な笑いはまさに救世主であり、そうした時代は言葉が徐々に巧みになってくる9~10歳ごろまで続くようである。

◇下品な笑いの魅力

 下品な笑いは、子どもが仲間を意識し、仲間との関係を構築していく上で大きな役割を果たす、というのが私の見解だ。しかし、ただそれだけではない魅力がそこに備わっていることもまた事実だ。例えば、「うんこ漢字ドリル」は仲間関係の構築のためのツールではなく、単独での学習を推進するためのツールだ。コロコロコミックも仲間と一緒に読むこともあるだろうが、基本的には単独で読むことが多い。単独でも学習の効果が発揮されたり、長年にわたって支持を集めたりするのはなぜなのだろうか。

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