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街にあふれる「プロテイン」賢い取り方は? フレイル予防にも

2021年11月14日10時00分

本多京子・NPO法人日本食育協会理事

 健康志向の高まりや筋トレブームで、コンビニやドラッグストアに「高たんぱく質」をうたった商品が並ぶようになり、たんぱく質補助食品「プロテイン」を日常的に摂取する人も増えている。血糖値が気になる世代やダイエットに励む人は、主食の炭水化物を制限し、プロテインで1日の必要カロリーを補うこともあると聞く。だが、日本は乳製品もたまごも気軽に手に入る飽食の国。3大栄養素の一つとはいえ、取り過ぎてしまうことはないのだろうか。医学博士・管理栄養士でもある本多京子・NPO法人日本食育協会理事に解説してもらった。

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◇五輪契機、フレイル予防も

 ここ数年、「たんぱく質」や「プロテイン」という言葉を目にすることが多くなりました。 背景には、東京五輪・パラリンピックに向け、アスリートと筋肉づくりの視点からスポーツ栄養学への関心が高まったこと、そしてもう一つは加齢などで筋肉量が低下する「サルコペニア」予防のための啓蒙(けいもう)活動が盛んになってきたことなどが挙げられます。

 高齢者の筋肉量が減少すると、歩くスピードが低下し、転倒しやすくなり、これが寝たきりや要介護などのフレイルにつながります。これまでは骨密度が低下して骨折しやすくなる骨粗しょう症が注目されていましたが、超高齢社会を迎えて骨を支える筋肉へも関心が向けられるようになったのです。その結果、粉末や顆粒(かりゅう)のプロテインパウダーやたんぱく質強化をうたったさまざまな商品が開発され、売り上げも伸びています。

◇カラダはたんぱく質でできている!

 たんぱく質は英語ではプロテインといいますが、これはギリシャ語の「もっとも大切な」という意味の「プロティオス」が語源と言われています。水分を除いた人体の最も多い構成成分がたんぱく質で、筋肉や臓器をはじめ、皮膚、骨・髪の毛、爪、血液、免疫細胞などのもとになっているからです。そのため、成長期はもちろんのこと、18歳以上~60歳を超えてもたんぱく質の1日の推奨量はあまり変わりません(※18~64歳男性で1日65g、65歳以上で1日60g。女性は18~75歳以上で 1日50g)。

 でも、若い時は焼き肉やステーキが大好きな人でも、加齢とともに食が細くなり、たんぱく質不足になりがちです。しかも、加齢とともに筋肉の合成より分解が多くなるため、筋肉量は減っていきます。サルコペニア予防のためには、たんぱく質は、成長期の子供やアスリートだけでなく、高齢になっても1日に卵9~10個分に相当する摂取が必要なのです。

◇賢い取り方は?

 たんぱく質には肉や魚・卵・乳製品などの動物性食品に含まれる動物性たんぱく質と大豆のような植物性食品に含まれる植物性たんぱく質とがあります。また、最近では普通の食品だけでなく、効率よくたんぱく質を摂取するためのさまざまなプロテイン製品も増えています。

 市販品には、大豆を主原料にしたソイプロテインや乳清を主原料にしたホエイプロテインなどがあります。それぞれたんぱく質を構成するアミノ酸に違いがあり、アスリートなどには筋肉づくりに役立つBCAA(分岐鎖アミノ酸)を多く含む商品が人気です。トレーニングとプロテイン摂取のタイミングもカギを握るため、運動と合わせて摂取するアスリートも多くなりました。

 たんぱく質の摂取目安としては体重1kg当たり1g、つまり体重60kgの人なら1日60gとされていますが、積極的な筋力作りをしているアスリートの場合は、体重1kg当たり1.5~2.0gが目安とされています。

◇1日3食で均等にとることが大切

 朝食を抜き、昼はパンや麺類で済ませ、トレーニング前後にプロテイン摂取をするという人もいるようですが、筋肉は絶えずつくる・壊すを繰り返しているので、基本的には1日3食で均等に取ることが理想です。朝食抜きで、夕食や夜のトレーニングでたんぱく質をたくさん取ると、たんぱく質不足の時間帯と過剰な時間帯ができてしまいます。また、プロテインをたくさん取ったからといって、それがすぐ筋肉になるわけではありません。まずは血液やホルモン・臓器などの原料として使われ、筋肉づくりに使われるのはその後です。しかも、取り過ぎれば腎臓に負担がかかり、肥満にもつながります。

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