世界歴代2位と3位
30年以上も破られていない女子100メートルの世界記録(10秒49)が、ついに塗り替えられるか。世界の陸上界は今、2人のジャマイカ人スプリンターに注目している。今年、世界歴代2位の10秒54をマークしたエレーン・トンプソンヘラ(29)と、同3位の10秒60を出したシェリーアン・フレーザープライス(34)。来年はいよいよ、世界の女子スプリント界で時計の針が動きだすかもしれない。(時事通信ロンドン特派員 青木貴紀)
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10秒49は、フローレンス・グリフィス・ジョイナー(米国=故人)が1988年に全米選手権で記録した。長い髪をなびかせ、長く伸ばした爪には色鮮やかなマニキュア。圧倒的な速さと個性的なスタイルで強烈な印象を残した。同年のソウル五輪で400メートルリレーを含む短距離3冠を獲得し、29歳で引退。同五輪で樹立した200メートルの21秒34も今なお世界記録として残る。
90年代以降、昨年までに10秒5台か、それより速いタイムで走った選手はいない。10秒6台でさえマリオン・ジョーンズとカーメリタ・ジーター(ともに米国)の2人だけ。ジョイナーに迫る選手は現れず、永遠に破られない「不滅」の世界記録と言われてきた。
トンプソンヘラ「世界記録を意識して」
そんなムードが、今年になって一変。突如として記録更新への期待が高まった。トンプソンヘラは東京五輪の100メートルと200メートルで2大会連続の2冠。100メートルは向かい風0.6メートルの恵まれない条件下で10秒61を出し、ジョイナーがソウル五輪で出した五輪記録を0秒01短縮した。
五輪後初戦となった8月のダイヤモンドリーグ(DL、米オレゴン州ユージン)では10秒54と世界記録に0秒05まで肉薄。今年は10秒6台を3度もマークし、確かな実力を印象付けた。DL公式サイトによると、9月のDL今季最終戦後、「今年は浮き沈みの激しい長いシーズンだった。でも、来年は世界記録を必ず意識していきたい」と宣言。射程圏に捉えている。
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