2021年11月12日
自民党のニュースでよく耳にする「派閥」。派閥幹部が談合して政策や人事を決める「派閥政治」といったマイナスのイメージで語られることが多い。自民党ではこれまでも「派閥解消」が声高に叫ばれたこともあったが、現在も七つの派閥が存在し、総裁選では派閥幹部の発言などが注目される。なぜ、自民党では派閥が求心力を維持し、一定の影響力を及ぼしてきたのかを探る。(時事通信政治部 島矢貴典)
毎週木曜日正午、多くの自民党国会議員はそれぞれ国会周辺のビルや党本部の会議室に集まる。「定例総会」などと呼ばれる各派閥の会合が開かれているためだ。現在自民党の派閥は、細田派、麻生派、旧竹下派、岸田派、二階派、石破派、石原派がある。会合では、派閥会長ら幹部があいさつし、みんなでカレーや弁当など昼食をともにする。この様子は「一致結束、箱弁当」と呼ばれることもある。
派閥が一斉に会合を同じ時間帯に開くのは、掛け持ちをできなくする狙いがある。国会開会中は話し合う案件がなくても、毎週開かれる。ある派閥幹部は「毎週同じ時間に顔を合わせ、同じ弁当を食べる。これだけで唯一無二の同志意識が強まる」と解説する。
ある派閥では、会費として月額5万円を所属議員から徴収している。このほかに、派閥が数千人を集める政治資金パーティーを開いた際には、パーティー券の販売が求められるという。ある閣僚経験者は1枚2万円のパーティー券600万円分のノルマだったと明かす。派閥幹部クラスでは、1000万円から2000万円分になるといい、ある中堅議員は「派閥のパーティー券販売は苦労する。売れなかった分は自分で購入する場合が多い」と打ち明ける。
各派閥は国会周辺に事務所を設け、専属スタッフを雇っている。こうした資金は派閥の運営に充てられている。
派閥は政策集団?
自民党国会議員が自らの派閥を紹介するとき、枕ことばに「政策集団」という言葉を使うことがある。あくまで、政策などを研究するために集まった議員集団であることをアピールするためだ。かつて、自民党では「金権政治」を打破するために派閥が解消されたが、のちに復活した歴史がある。そのときの看板に使われたのが「政策集団」だった。 実際、いまも学者らを招き、新型コロナウイルスや経済などをテーマに勉強会を開くことも少なくない。
とはいえ、自民党の派閥はそれぞれのトップを総裁・首相候補に担ぐために権力闘争を行う集まりという面を抜きに語ることはできない。長く政権与党の地位にある自民党トップの総裁になることは、首相になることを意味するため、その争いは激烈だ。
総裁選で、各派閥は派閥トップや自らが推す候補者の首相就任に向け、所属議員に行動を共にするように求める。二階氏は幹事長時代の今年8月、時事通信のインタビューに、総裁選で派閥の指示に従わない場合「派閥を退場するか、何か別の方向を進むことになる」と述べ、派内の結束を求めた。
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