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「中道の沃地」を放棄した立憲民主党 衆院選結果から読み解く選挙戦略と世論の乖離

2021年11月01日15時00分

野党選挙協力は熱量不足

 10月31日に投開票された衆院選。自民党は公示前から15議席減らしたものの、国会を安定的に運営できる絶対安定多数の261を確保。一方、共産党との共闘を進めた立憲民主党は公示前の110議席に届かず、96議席に後退した。この結果をどう読み解けばいいのか。元民主党参院議員で、一の橋政策研究会代表の加藤敏幸氏に寄稿してもらった。(時事ドットコム編集部)

「政権交代」望まぬ世論

 単独過半数を確保したことから岸田政権は信任されたといえる。筆者はもともとアベ・スガ時代の評価を「マイナス30議席」と見積もっていたので、前任者から負の遺産を引き継いだ岸田文雄首相にとっては悪くない結果だったと考えている。新体制への祝儀はさすがになかったが、その分逆風もなく、また、新型コロナウイルス感染者の激減もさいわいした。公明党も堅調であったことから、これで夏の参議院選挙を乗り切れば安定政権になるであろう。いくつかの取りこぼしは、それぞれの候補者の問題である。

 立憲民主党と共産党の議席減ということに加え、日本維新の会が躍進し国民民主党が善戦したことから、国会の風景が大きく変わると思われる。「課題山積なんだからしっかり議論をしろ」というのが民意であろう。

 さて、野党選挙協力を進めた立憲民主党であるが、共産党ともども苦杯をなめることになった。現実はそんなに甘くはないのであって、特に「政権交代」という旗印がプラスに働いたとは思えない。つまり有権者には、「与野党伯仲は望んでいるが、政権交代は望んでいない」という微妙な気持ちがあったと思われる。だから政権交代は「風」にはならなかった。

 政権交代を掲げるのはいい。しかし準備ができているとは思えないところに共産党から「閣外からの…」という苦心の修辞が飛び出した。これが「あやしげ」と受け止められたのではないか。そのうえ長年の支援団体である連合民間労組に背を向けられたのではエンジン全開とはならない。立憲民主党はもっと党内で議論を深めたほうがいいと思う。

◇熱量不足の原因は

 政権交代の決め手は投票率である。微増ぐらいでは政権交代には至らない。その意味で今回の選挙には「熱量」が不足していたといえる。

 この熱量不足は昨年9月の立憲民主党と国民民主党の合流に起因している。確かに当時の連合も大いに合流を促したと聞いているが、完全合流には至らなかった。いくら接着剤をぬっても接合面がもとから離れているのでくっつかない。また動機も身内というか同業者同士の都合ばかりで、肝心の国民にとってどのような意義があるのか、何のために合流するのかという大義が不鮮明であった。

 ということで、昨年9月に再出発した(ことになっている)立憲民主党にとってはなるほど芳しくない結果といえるが、本音では50あるいは60まで激減するのではないかとの不安に苦しめられてきた選挙に強くない議員にしてみれば、いろいろあるが「まずまず」ではないか、と天邪鬼(あまのじゃく)風に評価したい。

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