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新選組の武術「天然理心流」 今も残る土方歳三の技とは

今に伝わる天然理心流

 天然理心流4代目の近藤勇が亡くなった後、流派が途絶えたわけではない。ただ、当時の剣術には詳しい解説書があるわけではなく、口伝(口頭による伝承)と実技指導によって技術が伝えられた。幕末に門弟が1000人規模だったとされる天然理心流は、明治以降、幾つかの系統に分かれて伝承されたが、大正、昭和と時代が進み、競技剣道の発展とともに「古武術」というカテゴリーにくくられることになった。

 天然理心流を今に伝える流派の中で、今回は幕末の「実戦主義」を貫いている「天然理心流 武術保存会」(以下「保存会」)の稽古を見学させてもらうことができた。天然理心流を含め、幕末以前から存在した古武術の中には「型」を重視した演武中心の流派もあるが、保存会は幕末の天然理心流と同様、防具を着けた上での打ち込み稽古を通じて当時の技の伝承を目指している。

 保存会を率いる代表師範の加藤恭司さんは、近藤勇の養子・勇五郎が創設した撥雲館道場に連なる継承者で、約20人のメンバーとともに修行に励んでいる。保存会の稽古でまず目を引くのは、打ち込み稽古や素振りには重さ2キロ近い木刀を用いている点だ。

 「これだけ重い木刀だと、腕だけで振ることはできません。腰を据えて振らざるを得ないので、その分、体幹も鍛えられます」と、加藤代表師範は説明する。土方歳三や沖田総司も、こうした稽古でまず筋力と体幹を鍛えたのだろう。

 防具を着用した稽古では競技剣道と同じ竹刀を使うが、面、胴、籠手(こて)だけでなく、足の甲の部分まで延びた脛当ても着用する。競技剣道と違い、保存会のルールでは脚への打突も認められているからだ。

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