2021年10月22日14時00分
◇結局どっちが格上?
机仕事の警察庁に対し、体を張って市民の安全を守る現場の警察の方が上と考える人もいるかもしれない。だが、警視庁トップの警視総監や道府県警の本部長、規模の大きい県警の刑事部、警備部といった部門ごとの責任者には、全員ではないものの、警察庁の官僚が就任している。また、警察法は、大規模災害やオウム真理教事件などの全国的な事件、テロといった国家的な重大事案では、警察庁が各県警などを指揮すると定めている。
つまり、警察庁は人事や警察法の規定に基づき、警視庁や各道府県警に強い影響力を持っているというわけだ。こうした力関係は、警察庁長官の給与が警視総監の給与よりも高く定められていることからも裏付けられる。
「警視」や「警部」「巡査」といった警察官の階級についてもおさらいしてみた。警察法上、警察官の階級で最も上位に当たるのは「警視総監」だ。この最上位階級は警視庁トップだけに与えられる。一方、警察庁トップの長官の階級は警察法に規定されていない。だが、警察庁がまとめた書籍によると、規定がなくても「長官」は「最高位の警察官」と位置付けられている。
◇重責は同じ
警察庁長官と警視総監は普段、どんなことを考えながら仕事をしているのだろう。それぞれの経験者に聞いてみた。
ある警察庁長官OBは「個別の事件は各自治体の警察に任せ、治安上の課題に対処できるよう制度や組織を変えることに腐心した。日夜頑張る現場のことも念頭に置いていた」と話す。中村長官も同じような気持ちなのだろう。就任会見では「人工知能(AI)など先端技術を積極的に採り入れて警察業務を高度化させたい」と抱負を語っている。
これに対し、ある警視総監OBは「夜中でもパトカーのサイレンを聞けば、何か重大な事案が起きたんじゃないか、と気の休まることはなかった。首都の治安を守る責任者として常にしっかりとした判断をできるように心掛けていた」と振り返った。
警察庁の長官人事には内閣総理大臣の承認が必要だが、実は、警視総監人事も同様に総理の承認がいる。取材を通じて分かったことは、警察庁長官と警視総監はそれぞれ役割が異なるだけで、どちらも重要な責任を担っていることに変わりはない、ということだ。(2021年10月22日掲載)
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