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黄金世代「10人目V」は誰の手に 女子ゴルフを盛り上げる1998年度生まれ

優勝予備軍に高橋彩華ら

 女子ゴルフツアーは今、20代前半のプロが輝きを放っている。東京五輪で銀メダルを獲得し、9月第2週の日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯で優勝して今年だけで7勝した稲見萌寧は22歳。そして、ツアーを活気づけている中心的な存在が「黄金世代」として知られる1998年度生まれの面々だ。学年で言えば稲見より一つ上の22~23歳。この世代は既に9人が優勝を経験した。節目の「世代10人目」となるのは誰か。優勝予備軍の筆頭と目される高橋彩華らが、そこを目指している。(時事通信社 小松泰樹)

◇ ◇ ◇

 黄金世代の元祖とも言えるのは勝みなみ。鹿児島高1年だった2014年4月、KKT杯バンテリン・レディースオープンをツアー史上最年少の15歳293日で制した。新垣比菜も沖縄・興南高時代からツアーで活躍。勝、新垣と一緒に一発でプロテストに合格した小祝さくら、アマチュアで日本女子オープンを制覇するなどして早くから米ツアーを主戦場としている畑岡奈紗と、同じ学年に有望な選手が集まり、注目されるようになった。

 拍車をかけたのが渋野日向子だ。2度目のプロテスト挑戦をクリアして臨んだ19年シーズン、国内ツアーで2勝した後、初の海外メジャー挑戦だったAIG全英女子オープンで優勝し、国民的なヒロインとなった。もっとも本人は、勝や畑岡と異なりアマ時代はほぼ無名だったことから、黄金世代の一人ということに謙遜していた。同じく2度目でプロテスト合格の原英莉花、高校の全国大会で渋野と知り合った大里桃子、さらに河本結、浅井咲希。ここまでの9人がツアー優勝を果たしている。

同学年9人で計29勝

 畑岡は日本女子オープン連覇など日本ツアーだけで6勝。小祝も通算6勝で、勝が5勝、渋野が4勝、原が3勝、大里が2勝、新垣、河本、浅井が1勝ずつを挙げている。9人で計29勝(うち国内メジャー7勝)。「黄金」と形容するにふさわしい。

 浅井が世代9人目になったのは19年8月のCATレディース。外せばプレーオフという緊張感の中で微妙な距離のウイニングパットを沈めた直後、グリーン脇で見守っていた勝らに祝福されて涙に暮れたシーンが印象的だ。そこから「次なる10人目」が女子ツアーの隠れたテーマになった。2年が過ぎても10人目が現れていないが、幾度となく近づいたのが高橋だ。

 高橋は16年6月、日本女子アマチュア選手権で優勝。3打差の2位は、3カ月余り後に日本女子オープンを初制覇して一躍脚光を浴びた畑岡だった。17年5月下旬、今の若手プロにとってゴルフを始めるきっかけになったり憧れの的だったりしたであろう宮里藍が、同年のシーズン限りで引退すると電撃発表。結果的に国内ラストゲームとなった翌月のサントリー・レディース(兵庫・六甲国際GC)で、当時アマの高橋は上田桃子とともに予選ラウンドを宮里藍と同じ組で回った。

鬼門の最終ラウンド

 渋野らと同様に2度目のプロテストを突破し、最初に巡ってきたチャンスは19年6月のニチレイ・レディース。単独首位で最終日を迎え、プレーオフの末、鈴木愛に敗れた。同年11月の大王製紙エリエール・レディースオープン(4日間)では第3日まで2位を続け、最終日に伸ばせず6位にとどまった。

 21年に入ると「鬼門の最終ラウンド」が一層目立つ。4月のヤマハ・レディース葛城(4日間)は首位タイで出た最終日、スコアを六つ伸ばした稲見に逆転されて3位。2週後のKKT杯バンテリン・レディースオープン(3日間)では、単独首位でスタートした最終日に大崩れして15位に沈んだ。5月の国内メジャー、ワールドレディース・サロンパス杯(4日間)の2日目に単独トップへ。3日目は3打差に広げた。ところが、最終日に二つ落として5位に終わった。

 7月末の楽天スーパーレディース(3日間)で2日目に単独首位。最終日も二つ伸ばしたが、2学年下の吉田優利に屈して2位だった。8月のCATレディース(3日間)で、2位につけた第2ラウンドの後「自分にあまり期待していません」と自嘲気味に苦笑いしつつ、こんな自己分析も。「今思えば、(ワールドレディース・サロンパス杯など)あの頃は自分の気持ちがコントロールできなくて自滅していた。最近はコントロールできている」。最終日は風雨にも苦しみ、小祝に優勝をさらわれたが、自らに重圧をかけることはなかったようだ。

 新型コロナウイルスの影響による20年の試合減で、今季は変則的な20~21年シーズン。高橋はここまでトップ10入りが15回もあり、これは全体4位の多さだ。平均ストロークは70.9365で8位につけながら、最終ラウンドに限れば72.2073で38位。課題が表れている。未勝利でも賞金ランキング12位(8290万円強)にいる地力の持ち主に、勝利の女神がいつほほ笑むか。

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