6月下旬から感染急拡大
インドネシアで最初の新型コロナウイルス感染者が出たのは2020年3月のことだった。それ以降、1日当たりの感染者数は右肩上がりで増え続け、21年1月中旬から2月初旬には1万人を超える日が続いた。いったんはこれをピークに増加具合が減り、6月初めまではある程度落ち着いたかに見えていた。1月13日にジョコ大統領が第1号となって開始されたワクチン接種の効果が出ているとみられていた。
ところが、6月下旬から感染が急拡大し、7月14日から17日までは4日連続で1日当たりの新規感染者が5万人を超える事態となった。原因として考えられているのは、インド由来のデルタ株の上陸と、5月中旬のイスラム教の断食明け大祭での人流の増加だ。インドネシアでのデルタ株初感染者のニュースは、4月下旬ごろから地元でも報道されていたが、4月から5月のインドでの感染爆発のニュースは「遠い国の出来事」のように捉えられており、これといった対策は取られなかった。
また、断食明け大祭は、ちょうど日本のお盆や正月同様、毎年ジャカルタから多くの人が田舎に帰省する機会となっているのだが、昨年も今年も、感染者が多いジャカルタから地方への帰省は禁止されていた。ところが、規制の網目をかいくぐって帰省した人が、地元の報道で今年は約15万人いたとされ、人流が増加した。この、デルタ株と人流増加のダブルパンチで、首都ジャカルタをはじめ、多くの地域で感染者数が拡大することになった。各地の病床はほぼ埋まり、病院の廊下や仮設テントで点滴を受ける人や、入院できないまま自宅で亡くなる人が続出、医療崩壊が現実となった。医療用酸素も欠乏し、患者の家族が酸素ボンベや補充用の酸素を探し求め、急きょ設けられた補充ポイントには長蛇の列ができた。
だが幸いなことに、医療機関の懸命な対応、政府による病床の追加、ワクチン接種の促進に加え、日本を含めた海外からのワクチンや酸素濃縮器の提供などにより、9月に入ると1日当たりの新規感染者数が1万人を切り始め、9月下旬時点では3000人台で推移している。
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