時の政権幹部が一喜一憂するのが報道各社が毎月実施している世論調査だ。特に衆院選を控えたこの時期は民意を測るデータとして、与野党問わず内閣支持率や政党支持率の推移にアンテナを張っている。いつもは結果だけに注目が集まる世論調査だが、質問の仕方によって数字は大きく変化する。時事通信が毎月実施している調査を中心に、世論調査の「舞台裏」を探った。(時事通信政治部 真島裕)
第1回調査は安保闘争時
時事通信の姉妹機関で世論調査を専門とする「中央調査社」は1960年6月の岸内閣から内閣支持率の調査を開始した(75年4月からは調査主体を時事通信に変更)。ちなみに記念すべき第1回調査の支持率は16.8%だった。日米安全保障条約の改定をめぐり、政府と反対派が国会内外で激突した「安保闘争」がピークを迎えた時期で、岸内閣は翌7月、総辞職した。
以来、時事通信の内閣支持率調査は、新型コロナウイルスの影響で中止した2020年4月、郵送調査に切り替えた同年5~6月を除き、一貫して面接方式による調査を60年以上続けている。
危険水域からの回復は至難
時事調査で内閣支持率が最も高かったのは小泉内閣(01年6月)の78.4%だ。同年4月の自民党総裁選で「古い自民党をぶっ壊す」と訴えた小泉純一郎氏が下馬評を覆して勝利。当時の記事は「『改革断行』を掲げる小泉政権への国民の大きな期待感が改めて示された」と分析している。
一方、最低は竹下内閣(1989年5月)の4.4%。リクルート事件の疑惑拡大や同年4月の消費税導入が影響した。支持率が10%を切った内閣は、ほかに森内閣(2001年3月)の9.6%があるだけで、両内閣とも直後に総辞職した。
政界では内閣支持率が30%を割ると「危険水域」とされる。2000年以降の時事通信調査で、支持率が30%を切らなかったのは小泉内閣のみ。また、30%を切った後に支持率が回復したのは第2次安倍政権時だけで、他はいずれも1年前後の短命政権となっている。
滑り出しは高支持率だった菅内閣も21年7月の支持率は29.3%と初めて3割を切った。その2カ月後に退陣表明せざるを得ない状況に追い込まれた。
時事通信調査は他より「低め」
一概に世論調査といっても、調査方法はそれぞれ異なることをご存じだろうか。ほとんどの報道機関が電話による調査を採用する中、手前みそだが時事通信は開始当初から対面調査を続けている。永田町で「時事の調査結果は低めに出る」と言われる。その要因は質問の仕方にある。
時事通信の調査は「全国18歳以上の男女2000人」を対象に実施している。21年度の調査地点は全国計157地点。主に該当地域の選挙管理委員会で選挙人名簿を閲覧し、調査対象者を無作為に抽出する。調査対象者は毎月異なるようにしている。
調査は、基本的に毎月10日前後の土日を含む4日間で行う。対象者が在宅していない場合もあるので、最低3回は調査員が訪問するように心掛けている。
実際の調査では、対象者の面前で調査員が質問項目を読み上げていく形で行われる。例えば、内閣支持率については、単に「あなたは○○内閣を支持しますか」と尋ねるだけだ。
選択肢を示さないことから、結果的に「分からない」とする回答が多くなる傾向にあり、相対的に「支持する」の割合も低くなる。これが時事通信の調査で「支持率が低く出る」と言われる要因とされる。
さらに政党支持率の質問では、個別の政党名は挙げずに、「あなたはどの政党を支持しますか」と尋ねるため、無党派層が高くなる傾向がある。21年8月調査では「支持政党なし」が63.9%に上った。
同時期に実施した他の報道機関による調査では、「支持政党なし」は最低で27.3%、最高でも49%だった。電話調査では、政党名を選択肢として示すことから、「支持政党なし」の割合も低くなる傾向があるとみられる。
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