2021年09月09日15時00分
「自民党をぶっ壊す」と公言。郵政民営化法案が否決されるや衆院を解散して、造反者の選挙区に「刺客」を立てるなど、冷徹で「強い政治家」の印象が強い小泉純一郎元首相だが、実は「他人のこと」で涙している。06年の終戦の日の靖国神社参拝に関連してテレビ放送された当時の報道番組によると、純一郎氏は01年4月の首相就任の2カ月前に鹿児島県南九州市の「知覧特攻平和会館」を訪問。特攻隊員の絶筆を目にして大粒の涙を流した。番組ではハンカチで涙をぬぐう姿が映し出された。同館によると、知覧には大戦当時、陸軍の飛行基地があり、439人が沖縄に向け飛び立った。出撃直前の隊員が親兄弟や婚約者らに宛てた手紙、遺品、遺影などが多数展示されている。
純一郎氏は首相在任中の04年5月、同館に石碑を寄贈。そこには、「至純」、「内閣総理大臣小泉純一郎」と刻まれている。また、純一郎氏は16年5月、東日本大震災の救援活動で被ばくした米軍兵士らへの支援を涙ながらに訴えている。
◆撤退進言、菅首相を思い-進次郎環境相
「私は、ボロボロになってでも突っ込めという立場ではなかった」「引くという選択肢を含めて話した」。進次郎環境相は3日午後、連日の首相との面談の場で、「選択肢の一つ」として不出馬を進言したことを首相官邸で記者団に明かした。そして、自身の話に耳を傾けてくれたことへの「感謝」を示した上で、首相の言葉を思い浮かべ、涙をこぼした。最後に、自身の所管する地球温暖化対策などに触れ、「菅首相だからできた仕事も多かった」などと政権の実績を訴え10分超に及んだ話を終えた。
進次郎環境相は菅内閣の一員であり、総裁選対応をめぐる首相との協議はいわば「自分のこと」。純一郎氏にとって、沖縄の海に散った若き特攻隊員への思いや「トモダチ作戦」に参加して被ばくした米軍兵士への支援はもちろん「他人のこと」だ。同じ政治家、親子の涙でも状況は異なる。
歯切れがよく、国民的な人気が高い進次郎環境相だけに、自分のことで見えるところで涙を流すのはマイナス、という政界の常識は変わるかもしれない。とはいえ、進次郎環境相は今後、政治家としての節目のたびに、菅首相のために泣いた場面が映し出され、多くの国民が思い出すことになるだろう。
(2021年9月9日掲載)
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