「ネコの宿命」腎臓病の治療法を開発 「猫が30歳まで生きる日」 東大大学院・宮崎徹教授インタビュー

AIMタンパク質が脳梗塞治療に効果 ネコ腎臓病薬、人間の病気にも活用へ

 東大大学院医学系研究科の宮崎徹教授らの研究グループは、動物の血中に高濃度で存在するタンパク質「AIM」が脳梗塞の治療に大きな効果を発揮するとの研究成果をまとめ、米国の医学誌セルリポーツのオンライン版に15日(米東部時間14日)、発表した。(2021年9月15日掲載)

 AIMは体内にたまった老廃物などの「ゴミ掃除」機能を促進し、特にネコの腎臓病予防・治療薬として注目されているが、脳梗塞でも血栓によって壊死(えし)した脳細胞の断片やそこから生じる炎症の原因物質を効率よく掃除することで脳内の炎症を抑えることが分かった。現在、脳梗塞は発症直後の血栓溶解療法以外に有効な治療法はなく、宮崎教授は「ヒトでの脳梗塞からの回復促進や後遺症の抑制にAIMの活用が期待できる」としている。

 この研究では、脳梗塞の発症に伴い、脳内でのAIMの濃度が急速に高まる現象をきっかけに、病気に対するAIMの作用を明らかにした。脳梗塞が発生すると血栓で壊死した神経細胞から「DAMPs」という物質が放出されて脳内に炎症を広めるが、AIMは死んだ細胞断片やDAMPsに張り付いてマクロファージ(体内のゴミを掃除する役目の細胞)に位置を知らせ、効率よく排除できるようにする。その結果、脳内の炎症が抑えられ、脳圧の上昇による脳ヘルニアや神経症状など脳梗塞の後遺症が起こりにくくなることが判明した。

 宮崎教授らは、AIMを持たないように遺伝子を改変したマウスとAIMを持つ野生型マウスに脳梗塞を起こさせて比較し、正常なマウスの方が高い生存率になることを実証した。さらに、遺伝子改変マウスに静脈からAIMを注入すると、生存率が飛躍的に高まり、脳梗塞の後遺症である神経症状も著しく改善した。野生型マウスも梗塞の発生後にAIMを注射、体内のAIMの量を増やすと、生存率が向上し、神経症状も軽減した。

 脳細胞には「血液脳関門」が存在し、血液中の薬剤などが脳の組織液に混入できないようブロックしているが、脳梗塞発症後はこのブロック機能が低下していることから、AIMが脳内のDAMPsまで到達して炎症を抑制できることが分かった。

 宮崎教授らはこれまで、AIMのゴミ掃除促進機能によってネコの腎臓病のほか、腎疾患、脂肪肝、肝臓がん、真菌性腹膜炎、多発性硬化症などの病気を改善させる効果があることを突き止めており、ヒトで治療に応用できる可能性を示している。今回の研究によって、有効な治療法が少ない脳梗塞にもAIMを活用できる期待が高まった。

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