―混合ダブルスは昨年2月の取材で聞いていた通りになりました。一つは、許昕、劉詩ブン(雨カンムリに文)(中国)と当たる決勝へ行くまでも大変だと。実際、準々決勝でパトリック・フランツィスカ、ペトリッサ・ゾルヤ(ドイツ)を相手に、最終ゲーム2-9、6-10からの大逆転でした。
「私はあのペアに(19年)世界選手権で森薗(政崇)選手(BOBSON)と組んで負けているんです。ゾルヤにはリオデジャネイロ五輪の団体戦で9―3から挽回されているので、正直、また負けるかと。でも2-9になっても水谷選手が諦めなくて、いつもと違う水谷選手みたいにバンバン打ってくれて。4人の中で水谷選手(の気持ち)が一番強かった。いつも私の気持ちに押されるんですけど、初めて私が負けた感じで、しっかりついていこうと思いました。まだまだ絶対大丈夫とずっと言い聞かせてくれていたので」
―準決勝は台湾ペアに快勝して中国ペアとの決勝。過去4戦4敗の相手でしたが、昨年の取材で「やっているうちにこっちのペースになってくる」「女子の劉詩ブン選手を崩すのがセオリーだけど許昕選手を崩すのも戦術」と聞いていて、これもその通りになりました。
「決勝戦は第1、2ゲームとも相手が(安全に)入れてきました。許昕選手はいつものようにすごく高くて回転量とパワーのあるボールと違って、あれ、と思ったんです。劉詩ブン選手も入れてきているなあと。2ゲーム先取されても、無理せずに回していけば分からないと思っていたら、だんだん相手のボールにも慣れてきて。第3ゲームで(私が)許昕選手のボールを取れて、流れが良くなりました」
ダブルスは、誰が誰の球を受けるかのパターンがゲームごとに入れ替わり、最終ゲームが一方が5点に達したところで入れ替わる。混合では一般的に相手女子の球を男子が打つゲームがチャンスになる。
―日本ペアが取った4ゲームのうち第3、第5ゲームと最終ゲームでリードした前半も、伊藤選手が許昕のボールを受ける番でした。
「準決勝も男子選手のボールを私が受けた時の方がいい感じで、打ち返せるようになっているので気持ちがいいし、すっきりします」
―準々決勝もそうですが、水谷選手はピンチになってからすごい当たりでした。新しい卓球を身につけても、元が安定したラリーから勝機をつかむ卓球なので、初めはどうしても慎重になるんでしょうか。
「水谷選手も、ドイツペアとの試合の後に『最初から思い切っていきたい』と言ったんですよ。普段はそういうことを言わないので、どう考えているんだろうと思っていたんですけど。今大会はすごくいろんなことを言ってくれたし、それもプラス思考だったから、本当にやりたかったです」
―大事なところで目覚めました。
「最終ゲームになったらもう突っ走るだけですから。1本目から水谷選手がストレートを抜いて、流れが来ましたよね。あれはすごかったです」
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