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伊藤美誠が語る金・銀・銅〔五輪・卓球〕

小さなガッツポーズの意味

 東京五輪の卓球で混合ダブルスの金、女子団体の銀、同シングルスの銅メダルを獲得した伊藤美誠(スターツ)が、激闘を語った。3色のメダルと同じように大逆転あり、悔しい敗戦あり、充足感ありの戦いから何を感じたか、届かなかった目標へ向かって何をつかんだか―。(時事通信社 若林哲治)

  ◇  ◇  ◇

 ―閉会式では伊藤選手と石川佳純選手(全農)、平野美宇選手(日本生命)の卓球女子3人が目立っていました。日の丸を羽織っていましたね。

 「いろんな人から映ってるよと言われました。日の丸は野球の方たちが使っていいよと言ってくれたのを、みんなで広げて。よく海外の選手がやっているのがうらやましかったので、やっとできました」

 ―試合が全部終わった夜は。

 「NTC(東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター)に皆さん集まってもらって、この状況で開催されたことはもちろんですが、支えていただいたお礼のあいさつをして、メダルを見て喜んでもらえて、うれしかったです。私が一番試合数が多くて、助けてもらった方が多かったので。特に早田(ひな)選手(日本生命)は朝から一緒に移動して夜遅く帰って、ボール拾いとかしてくれて心の支えになってもらいました」

 ―一度の五輪で3色のメダルを取る選手は珍しい。

 「目標は金3だったので、シングルスで負けた時は悔しい気持ちがあって。でも金メダルも大きいですし、最後は団体戦を楽しく終われました。何より混合ダブルスは負けなし、団体戦とシングルスは中国人選手以外に絶対に負けないという、一つのラインは達成できましたし、同時に中国人選手を倒す目標はもっともっと強く芽生えました」

 ―銀と銅は人によって輝き方が違いますが、伊藤選手にとっては。

 「一番悔しかったのはシングルスの3位決定戦に勝った後です。準決勝で負けた直後は3位決定戦があったので、気持ちの切り替えを一番に考えていて。メダルを取れる、取れないは大違いですけど、その前に私はどの試合も勝ちたいので、まず勝って、メダルはついてくるという思いでした」

 ―準決勝で孫穎莎(中国)に0-4で敗れ、その日の3位決定戦でユ・モンユ(シンガポール)に4-1で勝ちました。

 「勝った後は、勝ったんですけど悔しくて。(準決勝で)力を出し切れなかった悔しさ、中国人選手に勝てなかった悔しさ。でも何て言うのか、乗り越えた銅メダルという感じですね」

 ―柔道の3位決定戦を見たことがありますか。

「あります。そこであんまり喜ばないですよね、皆さん」

 ―伊藤選手も小さなガッツポーズでした。柔道は「本家」だから金を期待される。準決勝で負けて、気持ちを奮い起こして銅メダルを取った時の表情は何とも言えないものがありますね。切り替えも簡単ではないから。

 「そういうことはちゃんとできたかなと。負けた後も皆さんが明るく接してくれて、私もプラス思考で、決勝と3位決定戦しか勝って終われないと」

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