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熱波に襲われた米ポートランドの猛暑体験リポート

東リカ(ライター/米オレゴン州在住)

3日連続で観測史上最高気温を更新

 2021年6月後半、米国北西部やカナダ西部が記録的な熱波に襲われ、筆者の暮らすオレゴン州ポートランドでも、これまでにない猛暑となった。州最大の日刊紙「オレゴニアン」サイトの6月30日の記事によると、オレゴン州では少なくとも63人が熱波の影響で死亡したという。そのうち、ポートランドのあるマルトノマ郡での死亡者数は45人とのことだ。

 ポートランドでは、6月25日の金曜日から熱波の影響で気温が上がり始め、土曜には42.2度、日曜には44.4度、月曜には46.7度と3日連続で観測史上最高を更新した。これまでの最高気温は、40年前の1981年に記録された41.6度で、北海道稚内市とほぼ同緯度のポートランドで40度を超える日が続くことは珍しい。通常は、夏場でも夜間に向けて気温が下がり、また湿度が低いため、日中でも陰に入れば体感温度はそれほど高くない。このような気候のため、ポートランドではエアコンのない家も珍しくない。

 ところが、今回の「1000年に1度」とまで言われるほどの極度の熱波では、日陰でも全く体感気温は変わらず、まるでサウナに入っているような暑さであった。最近、お菓子作りに凝っている筆者の娘は「パンを発酵させたオーブンの設定温度と同じだ」と驚いていた。

 また、筆者の周囲では、世界最高気温を記録したカリフォルニア州のデスバレーと比較する声が多かった。ニュージーランド国立水・大気圏研究所の気象学者ベン・ノール氏の「日曜日、ポートランドは地球上の99.8%以上より暑くなる。ポートランドより暑いのは、アフリカのサハラ砂漠、ペルシャ湾周辺、カリフォルニアの砂漠だけ」「記念すべき日だ! 月曜日のポートランドは地球上の99.9%以上より暑くなる」といったツイートも話題になった。

 筆者の暮らす住宅街は、普段なら朝晩、犬の散歩やジョギングをする人たちでにぎやかなのだが、猛暑の続いた3日間は道路のアスファルトも熱くなったほどで、歩く人の姿を見掛けることはなかった。中庭に鳥のえさとしてつるしてあった牛脂の塊もろうそくのろうのように溶けて、容器から流れ落ちてしまった。

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