23日に開幕する東京五輪で、日本勢の活躍に期待が高まっているバドミントン。男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(NTT東日本)をはじめ、近年は国際大会での好成績が目を引く。東京大会では2012年ロンドン五輪の銀1、16年リオデジャネイロ五輪の金1、銅1を上回るメダル数も見込まれている。
競技の知名度はあるものの、どちらかと言えばマイナースポーツの扱いが長かった日本のバドミントン。東京五輪を契機にさらなる発展を遂げる可能性は―。五輪2大会に出場し、引退後はビジネスキャリアを積む池田信太郎さん(40)に聞いた。(時事通信運動部 山下昭人)
◇ ◇ ◇
池田さんは07年世界選手権の男子ダブルスで3位に入った元トップ選手。08年北京五輪に出場し、ロンドン五輪には潮田玲子さんと組んだ混合ダブルスで臨んだ。日本勢が力をつけ始め、小椋久美子さんと潮田さんの女子ダブルス「オグシオ」ペアが人気を集めていた時代。池田さんは、当時と比べても今のバドミントン界を取り巻く状況はステージが上がったと感じている。
「やっとバドミントンの本質を世の中に出せていくようなフェーズになったかなと思っているんですよ。東京に五輪が来て、どういう競技なんだろうと知る機会が増えてきたと思うんですね。メダルが取れるような競技になってきて、本質を多くの人に伝えられるチャンスになってきた。強化がより順調に進んだので、見られ方がだいぶ変わってきたなと思います」
品格を伴うスポーツであるべき
池田さんが考えるバドミントンならではの特徴や価値とは何か。同様にネットを挟んでラケットで打ち合うスポーツ、テニスとの共通点も挙げながら、こう語る。
「もともとイギリスのスポーツで、ベンチマーク(基準、指標)はテニスなんですよ。高貴なスポーツであるけれども、オランダの植民地だったインドネシアに娯楽として伝わった。東南アジアは(用具の材料になる)天然ゴムがとれるところで、街の中でバドミントンをするようになって大衆化されてきた」
「バドミントンは品格を伴っているようなスポーツであるべきだなと僕は思っているところがあり、(日本で)そういった価値がもっと大きくなっていけば、見え方も変わっていくと思っていますね。中国、香港とかは非常にマーケットとしては太い」
サイズ感がちょうどいい
池田さんは2018年にゼビオアリーナ仙台で開催された国内リーグ、S/Jリーグの「トップ4トーナメント」でアンバサダーとして運営に携わった。これまでの日本での大会では見られなかったような照明や音楽などの演出を取り入れ、新しい観戦体験が得られる機会を目指した。根底にある考え方は「バドミントンの価値を最大化すること」だ。
「バドミントンの競技って天候に左右されず、必ず何月何日に試合ができるというのは、非常に強みだと思うんですね。あと、サイズ感がちょうどいい。観客として横からでも後ろからでも見やすい設計にしやすい。ゼビオアリーナではボックスシートみたいなものを作って、食事もできるしお酒も飲めるところも作らせていただいた。アリーナレベルでも近くで試合を見られる。バスケットボールとかだとボールも人も飛んでくるし、何かを設計するのは非常に難しいですよね。バドミントンってしょせん羽根なので(笑)。設計を考えていくと、非常に収まりやすい競技の一つなんじゃないかなと思っています」
「(取り組みは)継続できなかったんですけど、選手からすると非常にいい機会提供だったということはいまだに言われます。海外の大会に行くと当たり前なんですよね。コートの横にソファーがあったり、そこでお酒が飲めたり、ベッティングしていたり。そういう価値観がありますよ、やることでこういうメリットがありますよ、ということもエデュケート(啓発)して、そういった価値観が良しとされるような文化になってほしい」
新着
会員限定