コンビニエンスストアやスーパーなど大手小売り各社の間で、まだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」の削減に向けた取り組みが加速している。国連の持続可能な開発目標(SDGs)への関心が広がりを見せる中、ローソンの竹増貞信社長が「SDGsを基軸に経営を行っていく」と明言するなど、小売業界でも環境配慮を重要課題の一つに据える動きが顕著だ。新技術で総菜などの消費期限を延ばしたり、デジタル技術を活用して売れ残りの発生を抑えたりするなど、各社がさまざまな方法で食品ロスの削減を図っている。(時事通信経済部 安藤亮太朗)
農林水産省が公表している推計値によると、国内では2018年度で年間600万トンの食品ロスが発生している。家庭からの発生を除いた事業系は324万トンで、うち66万トンをコンビニやスーパーなどの食品小売業が占める。特にコンビニは、国内約5万6000店という店舗数の多さや生活への身近さから、販売期限切れの弁当や売れ残った恵方巻きなどの季節商品の大量廃棄がたびたび話題となり、食品ロスの象徴として注目を浴びてきた。
大手コンビニ3社が独自に公表している19年度の食品ロス発生量は、ファミリーマートが6.6万トン。ローソンは1店舗1日当たり平均5.9キログラム(単純計算で年間推定3.1万トン)だった。セブン―イレブン・ジャパンは、グループの食品関連事業6社合計の売上高100万円当たりの重量しか公表していないが、22.35キログラムで、6社の合計売上高6兆8445億円から逆算すると年間推定15.3万トンとなる。いずれも一部店舗の実績を基に算出しているため、ローソンとセブンの年間発生量はあくまで推定値だが、3社合計はおよそ25万トンに上る。
二つの構造的な問題
こうした状況を受け、大手コンビニ各社は相次いで環境施策と50年の達成目標を策定。食品ロスの分野では、最大手のセブンが75%削減(13年度比)、ファミマが80%削減(18年度比)、ローソンは100%削減(同)を目標に掲げ、負のイメージ払拭(ふっしょく)に向けて、かじを切っている。
食品ロス削減をめぐって、小売業界では二つの構造的な問題が指摘されてきた。一つは、製造日から賞味期限までの期間をメーカーと小売店、消費者で3分割する「3分の1ルール」と呼ばれる商習慣だ。メーカーは最初の3分の1の期間が経過する前に商品を小売店へ納品しなければならず、小売店での販売期限も次の3分の1が過ぎるまで。期限を過ぎて出荷も販売もできず、無駄な廃棄が増える原因となってきた。
セブンは14年からいち早く、飲料や菓子で納品可能な期限を2分の1に変更。賞味期限が180日の商品の場合、半分の90日が過ぎるまで店舗への納品を認めた。店頭での販売期間は3分の1(この場合は60日)から変えず、製造から150日までと、より賞味期限近くまで店頭に並ぶようになっている。19年までに主要コンビニチェーン8社全てが飲料や菓子、カップ麺などの商品にこうした「2分の1ルール」を適用したほか、スーパーでも大手を中心に広がるなど、流通段階での改善が進んでいる。
もう一つの構造的な問題は、コンビニではいつ来店しても客の目当ての商品が並んでいる状況をつくるため、廃棄を前提に商品を多めに仕入れておくのが一般的となっていることだ。販売機会の確保を優先する手法も、食品ロスの大きな要因となっている。
販売期限を長期化
廃棄の削減と販売機会の確保を両立するため、近年、コンビニ各社が注力しているのが、店頭での販売期限を延ばす取り組みだ。セブンでは、09年に消費期限が通常の弁当より長いチルド弁当の販売を始めて以降、パスタやサンドイッチなどでも長鮮度商品の開発を進め、これら「日配食品」と呼ばれる分野で24時間以上の販売期限がある商品の比率を約84%(20年5月末時点)まで高めた。
ファミマやローソンでも同様の取り組みが進んでおり、直近ではサラダや総菜の容器を従来のプラスチック製のふたからフィルムに変更した「トップシール包装」への置き換えも広がっている。密封できるため、窒素ガスなどを充塡(じゅうてん)することで酸化を抑え、消費期限をさらに伸ばすことに成功した。
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