東京五輪の開幕早々、ロシアのミシュスチン首相が7月26日、北方領土の択捉島を就任後初めて訪問した。ロシアの首相が「クリール諸島(北方領土と千島列島)」を視察するのは、大統領時代に国家元首として初めて北方領土の地を踏んだメドベージェフ首相が、2019年8月に択捉島に行って以来約2年ぶり。日本政府はすぐさま「極めて遺憾だ」と抗議した。
ミシュスチン首相は表向き、北方四島での日本との共同経済活動に向けた「ユニークで前例のない提案」(プーチン大統領)をまとめるべく現地に赴いた。ただ、日本の水面下の働き掛けを無視しての訪問強行。背景として、新型コロナウイルス禍で日ロ首脳の対面会談が実現しない中、フリーハンドで日本側に先手を打ち、安倍晋三前首相ほど平和条約締結交渉に前のめりでない菅義偉首相の出方をうかがった可能性がある。
また、ロシアは昨年7月に憲法改正で領土割譲を原則禁止したほか、今年9月には政権与党が必勝を期す下院選を控えており、内政上の思惑も透けて見える。(時事通信社・前モスクワ特派員 平岩貴比古)
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