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「入国後隔離」の実態 4カ国での体験記 新型コロナ

韓国◇自宅隔離で「男子チーム」が大活躍

 2020年末、やむを得ない一時帰国の後、韓国に戻った。韓国では2週間の隔離生活は、ホテルではなく自宅でも可能だ。

 隔離はソウルの仁川空港に降り立つと同時に始まっているように感じた。入国者は検疫に関する複数の書類の提出と、体温チェックを受け、さらには隔離対象者に義務付けられているアプリを携帯にダウンロードする。このアプリ、体温などを毎日申告する「体調管理機能」だけでなく、なんと全地球測位システム(GPS)を利用した「位置情報追跡機能」まで付いている! ホテルや自宅での隔離では外出が不可で、それを違反していないか常に監視できるようになっている。

 空港からは入国者専用のリムジンバスと入国者専用車両が設けられたKTX(ソウルと地方を結ぶ高速鉄道)で、自宅のある釜山まで移動した。

 隔離2日目には居住地区の担当者(区の職員)が「衛生用品」(ハンドジェル、除菌スプレー、マスク、体温計など)と「隔離通知書」など必要書類を届けに来た。もちろん受け渡しは非接触。この「隔離通知書」には万一、隔離中の規則を破った場合は罰金や懲役の処罰対象にもなること、外国人については在留資格の剥奪や国外退去命令の可能性も記されている。実際に隔離を破り処罰された人もいて、韓国の本気度がうかがえる。

 また、ダウンロードしたアプリには毎日朝夕2回、体温の測定記録と健康状態を登録しなくてはならず、しないとアラームが鳴る。アプリのデータは居住している区の担当者と共有されているため、健康状態や所在地の確認はいつでもされている。そして、時々、担当者から電話も入るものの、事務的・高圧的な監視ではなく、「隔離生活で不便なことはないか?」というふうに対応が丁寧で親身だった。

 数日後、疲れがドッと出たのか体に皮膚炎のような症状が出てしまった。とはいえ隔離中で病院に行けないため、夫に頼んで薬局で薬を買って来てもらい、何とかしのいだ。

 思春期真っただ中の高校生の長男も買い物やゴミ捨てなどを積極的にやってくれたり、いつも週末はインドア派の夫が小学生と保育園児の次男、長女を気晴らしに遊びに連れて行ってくれたりと、わが家の「男子チーム」が大活躍だった。

 友人たちとはネットでもビデオ通話などでしかおしゃべりできなかったが、ある日、そのうちの1人が玄関先までケーキの差し入れを持って来てくれるというれしい出来事もあった。

 幸い入国時と隔離14日目のPCR検査がともに陰性で14日目の昼に晴れて自由の身となったが、コロナ禍での日本との行き来や隔離生活は非常に貴重な体験であったと思うし、たくさんの人に助けられ、人とのつながりの温かさを実感した。(原美和子)


 以上4人の「入国後隔離体験談」を紹介した。国によっても事情は様々で、滞在したホテルにも当たりはずれはある。

 だが慣れない隔離生活で苦労したことも、そうした環境でもストレスをため込まないように工夫して過ごしてきたことも、共通している。

 お互いがんばりましょう!

(2021年6月14日掲載)

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