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「入国後隔離」の実態 4カ国での体験記 新型コロナ

柳沢有紀夫(豪在住/文筆家)

 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大は、ワクチンの接種が進む国がある一方で、次々と新しい「変異株」が発見されるなど、予断を許せない情勢にある。いったん感染を抑えることができた国が、変異株の侵入で感染爆発が起きた例もある。このため、多くの国では、いまだ国外からの入国者には神経質で、入国に際してはかなり厳重な隔離をしている国々が多いことはご存じだろうか?

 入国隔離対策では、「政府指定のホテルでの14日間隔離(自宅などは不可)」といった対策が多く、それなりの効果を上げているようだ。

 それでは、14日間の「入国後隔離」とは、いったいどんなものなのだろうか?精神的・肉体的な負担はどの程度のものなのか?私が主宰する海外在住日本人ライターの集まり「海外書き人クラブ」の会員で実際に体験した人が何人かいる。タイで家族3人のホテル隔離を経験した人、ニュージーランドで娘と2人で経験した人、オーストラリアで単身体験した人、そして最後に韓国から家族のいる家に戻って「自宅隔離」を経験した人の手記をお伝えしよう。

タイ食事とオモチャの持ち込みがポイント!?

 勤め先の辞令でタイに赴任したのは2021年1月初旬。妻と3歳の娘を伴っての赴任だが、入国後にバンコク市内で家族共々15日間のホテル隔離が必要だった。

 同年1月末に豪州のシンクタンク、レービ研究所が新型コロナへの各国の対応策を評価した「COVIDパフォーマンス指数」ランキングで、タイは98カ国中4位と高評価。それだけに隔離生活もかなり厳格なものであった一方、隔離施設のオペレーションやスタッフの対応はレベルの高いものだった。

 隔離施設は事前予約制で、空いていれば好きな宿泊施設、好きな部屋タイプが選べる。それによって値段もピンキリだが、私のような日系企業の駐在員は一人当たり6万バーツ(約21万円)程度の長期滞在用サービスアパートメントに泊まる人が多いようだ。家族3人なので、部屋は2ベッドルーム(日本のマンション風に言うと2LDK)にした。

 宿泊費用は自己負担が原則だが、今回は社命による転勤なので、費用は会社が出してくれる。タイ人の場合、タイ政府が設置した無料の隔離施設もあるが、実際に入った人の話を聞くと、環境は劣悪らしい。そのため、タイ人でも金銭的な余裕のある場合は有料の隔離施設に入ることが多いようだ。

 長期滞在用サービスアパートメント宿泊するということだけを見れば、「南国のリゾートホテルで家族とともに優雅に過ごす休日」に見えなくもない。

 ところがやはり隔離は隔離。空港に到着すると、全身コロナ用防護服に身を包んだホテル職員がお出迎え。物々しい雰囲気で送迎用ワゴン車に乗せられホテルに移動し、隔離生活が始まった。

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